調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動法律・狭山部会 > 学習会報告
部会・研究会活動 <法律・狭山部会>
 
法律・狭山部会・学習会報告
2003年6月10日
日本における反差別法の検討

松本健男(弁護士)

  1965年の同対審答申、1969年の特別措置法制定以降、部落差別の実体的側面は相当改善されてきたものの、差別を禁止する規制法、又は被害者を救済する法制は、甚だ不十分であった。かかる状況の下、部落解放運動の中で、差別の解消を目的とした法整備の必要性が提起され、1985年1月に「部落解放基本法」要綱(案)及び「差別規制法」要綱(案)が策定された。

  「基本法」要綱(案)は、部落差別の根本的かつ速やかな解消のために総合的施策を講ずることとし、部落差別を「法の目から許されない社会悪として、法律により禁止」すべきとしていた。「差別規制法」要綱(案)では、差別表現・差別扇動の禁止・処罰を含め、差別的身元調査、雇用関係における差別を禁止し、救済機関として都道府県に設置される人権委員会を予定していた。これら要綱(案)は、反差別法の原点ともいうべき内容を備えていた。

 その後、国際人権規約や人種差別撤廃条約の批准・加入を経て、反差別法は一定の発展を見てきた。自由権規約上、法律による平等の保護が規定されているし(第26条)、差別等の扇動となる憎悪の唱道を法律上禁止する規定もある(第20条)。しかし、日本の裁判所は、かかる反差別規定の適用に概して消極的であるし、適用したとしても恣意的である。

  また、各種立法上の平等規定も、極めて不十分である。特に、国籍に基づく差別は甚だしく、裁判所も安易にその「合理性」を認定している。さらに、石原発言のごとき差別扇動についても、「言論の自由」を理由に、放置されている。総括すれば、国際人権諸条約の意義は、国内法制上、十分に反映されていない。したがって、最低限、「差別規制法」要綱(案)で提起された措置が、法制化されるべきである。

 また、差別に対する救済の関連で、現在人権擁護法案が上程されているが、その内容は、甚だ不十分である。組織体制も現行の法務省人権擁護局と変わらず、権限も、助言・指導・調停・仲裁・勧告・訴訟参加にとどまり、命令発令権が欠落している。地方人権委員会も予定されていない。現行の法案では、人権擁護法制は、画餅に帰することとなろう。

(李 嘉永)