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2007.12.19
部会・研究会活動 <女性部会>
 
女性部会・学習会報告
2007年9月21日

ジェンダーの視点からみる憲法24条

大野町子(弁護士・研究所副理事長)

 前回に引き続いて、憲法「改正」の動きやジェンダーバッシングに対して、「両性の平等」を規定した憲法24条を中心に現行法の意義とそれに関連する民法について大野町子弁護士に解説いただいた。(以下要約)

1.成立の経緯

 憲法24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)は以下のように規定している。

 「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

2.配偶者の選択、財産権、相続、居住の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」

 明治憲法下の「家」は、家の登録方式である「戸籍」によって形づくられる血縁によって、世代の交替があっても家の血は絶えることなく、無限に続くものとされた(無限家族)。

*無限家族:国家が無限に続くように家族も無限に続くという考え方。天皇制と家族制度が結びついた考え方。

 家制度イデオロギーが、天皇制イデオロギーの温床の役割を果たしていた。憲法の成立過程においても24条は、国体を破壊するものではないかといった批判があり紛糾した経緯をもっている。

2.憲法24条の意義

1.「家」制度の否定、近代家族への脱皮(民法・家族法の大改正)。

2.憲法13条(すべて国民は、個人として尊重される)と14条(法の下の平等、差別の禁止)の原則を家族関係にも及ぼすことが目的である。

(1)平等で自由な人格者としての個人の意思を最大限に尊重して、婚姻の自由にはじまる自由・平等の夫婦中心の家族像をうち出している。すなわち夫婦財産制での夫婦平等、離婚の自由化、平等相続などである。(2)いかなる弱者も個人として尊重され保護される場としての家族を確立する。(嫡出でない子、未成年、老人や心身障害者の保護)これは、福祉国家としての公権的関与の原理による。

 家長が財産を管理し、家族の面倒をすべてみる明治憲法下の家族と異なり、近代の家族のかたちは、1.家族は婚姻によって形成され、夫婦の死亡によって終了する。あくまでも夫婦を中心に考える(有限家族)2.自己責任(個々人が自由である何面、自分で責任をもつ)3.親子ではなく夫婦が家族の基本的軸 4.家族の人格の平等を基本としている。

3.民法・家族法の問題点

1. 民法にいう「人」の平等とは
 第2章「人」 第3条1「私権の享有は出生に始まる」。人は生まれれば、出身、財産の有無など関係なく、すべて平等であること。女で生まれたか、男で生まれたかを区別しないところが出発点である。

2.戦後の急激な改正で、個人の尊厳・両性の平等の視点から抜け落ちている点がある。女性差別撤廃条約の批准、家族形態の多様化の流れの中で婚姻制度、離婚制度の見直しが迫られている。

4.1996年民法改正案要綱

 1996年民法改正案要綱が内閣で閣議決定されたが、氏・別姓で反対があり今日まで改正されず据え置かれている。1996年改正案要綱は、以下の通り。

  1. 婚姻年齢を16歳から18歳に引き上げ、男女とも18歳とする。
  2. 女性の再婚期間を100日に短縮する。
  3. 夫婦の氏について、選択的夫婦別氏制を導入し、子の氏について婚姻の際の夫または妻のいずれかの氏を定めるものとする。
  4. 離婚の際、子の面接、監護すべき者、養育費の分担について必要な事項を定める。
  5. 離婚原因として、精神病離婚を削除し、5年以上別居していることを加える。

 ただし、離婚原因があっても、一方の配偶者、子に著しい困難または耐え難い苦痛をもたらしたり、離婚が信義に反するときは離婚を認めない。

(6) 嫡出でない子の相続分は嫡出である子の相続分と同等とする。

5.再検討すべき点

1.再婚禁止期間について(733条)

 「女は、前婚の解消又は取消の日から6ヶ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」これは、女性だけにある差別規定で、前婚と後婚の間で妻が産んだ子の父親が誰か問題が起きないようにした規定であるといわれている(父性混乱の防止)。しかし、なぜ、すべての女性に対してこの要件をあてはめるのか?高齢で再婚する場合はどうか?また、離婚が成立する前から夫との関係がすでに破綻していて他の男性の子を妊娠し、離婚の成立から300日以内に子を出産したため前婚の夫の子と推定される場合はどうか、など不合理が多い。この条文を廃止して推定が二重に及ぶ場合は、どちらの子であるかを定める手続を新設あるいは期間を短縮することが必要である。

2.氏について(750条)

 「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」

 改正要綱では、(1)同姓、別紙の選択 (2)子は婚姻の際に父又は母の氏を称しどちらかに統一する。となっていたが、反対論として家族の崩壊を招く・家族の一体感が損なわれる等の意見が出され成立を見なかった。しかし大切な視点は、単に職業等の不便さから旧姓を名乗りたいというのではなく、名前は自己の人格の象徴だから、自分の生来の名前を名乗り続けることに、妻・母・嫁としての役割だけでなく女性個人としての生き方や対等な夫婦関係の形成などの願いがある。婚姻に際して、どの氏を選択するかは純粋にプライベートな事項であり、氏の人格権的性格が尊重されなければならない。

3.嫡出である子と嫡出でない子の平等化

(1) 住民票、戸籍と婚外子の取扱い

 戸籍の父母との続柄欄において嫡出である子は「長男」「長女」のように記載されるが、2004年11月1日までは嫡出でない子は「男」「女」と記載された(戸籍法施行規則33条1項および附録6号)。東京地裁2004年3月2日判決(訟務月報51巻3号549頁)は、当時の続柄欄の記載は戸籍制度の目的との関連で必要性の程度を越えており、プライバシー権を害しているとの判断を示した。そこで、同規則が2004年11月1日より改正され、それ以降に嫡出でない子出生の届出がされた場合、嫡出である子と同様の「長男」「長女」といった記載がなされることとなった。ただし、既に「男」「女」と記載されているものに関しては、当事者の申請によってはじめて更正され、また除籍等については申請しても更正を拒否されるなど、問題が多いと指摘されている。(これに対して住民票における世帯主との続柄記載は、1995年3月に行政の責任において一律に「子」と更正されている)

(2) 相続における婚外子差別(900条4)

 東京高等裁判所(1994年11月30日)は違憲判決。

 「父母が婚姻しているかどうかという偶然の事情で重大な不利益を受けるのは適切ではなく、相続差別の規定は憲法14条の社会的身分による差別に当たる」。

 最高裁判所(2000年1月27日)は合憲判決。

 「民法が法律婚主義を採用した結果、婚姻関係から出生した嫡出である子と婚姻外の関係から出生した嫡出でない子との区別が生じてもやむをえない」

 現在も嫡出でない子は、差別を受け続けている。女性が差別された状況にあることから婚外子差別は、女性問題でもある。また、子どもの健全な成長発達や子どもの福祉を実現する方向を最優先すべきであって、事実婚であろうと法律婚であろうと保護の目的や対象に差異がないことを明確に法律で規定すべきである。

(文責:中田理恵子)