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歴史部会・学習会報告
1999年7月
全国部落史研究交流会 予備報告
−近代・現代の社会変革と部落

(報告)渡辺俊雄(部落解放・人権研究所 客員研究員)

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 昨年の第4回全国部落史研究交流会の全体会で、今西一さん(小樽商科大学)が近代の部落史について国民国家論の立場から報告し、「部落」差別は近代国民国家が創出した差別であり、部落史が前近代から「連続」すると考えるのは神話だと述べた(『部落民衆・国民国家論と水平運動』1999年7月)。

 これに対して討論では、部落差別は前近代における重層的なものを受け継いで近代に定着しているのではないか、近代と前近代をきっぱりとわけるのではなく移行期社会論をどう立てるかの練り直しが必要ではないか、などの意見が出た。本報告は、昨年の報告と討論を踏まえて、近代の部落史の枠組みについて検討するものである。

 これまでの近代の部落史研究の大きな流れは、馬原鉄男『日本資本主義と部落問題』、藤谷俊雄『部落問題の歴史的研究』あるいは秋定嘉和『近代と被差別部落』などに代表されるように、部落問題を階級支配・経済的な搾取との関連で解明するものだった。ついで鈴木良「地域支配論」、布川弘「都市下層社会論」、あるいは藤野豊「優生思想」など、部落問題が成立するメカニズムを明らかにしようとする研究がある。

 近年では、ひろたまさき『差別の諸相』によって「近代」の論理が差別をつくる点を強調する議論が大きな反響を呼び、さらに「部落」差別を近代社会が生み出したものとする畑中敏之の主張(『「部落史」の終わり』など)が教育・啓発のみならず部落史研究にも大きな影響を与えた。昨年の報告者である今西一『近代日本の差別と性文化』も同じ流れの上にある。

 しかし現代も含めて、部落差別を近代社会が創出したものと考えるのは妥当だろうか。最近のことだが、解放同盟大阪府連がまとめた『差別事件が問いかけるもの』をみても、差別事件の背景はさまざまだが、部落の身元調査で決め手になると考えられているのは「皮屋」であり、「部落はこわい」とイメージされているのは今も昔も変わっていない。こうした問題を、部落差別の歴史性と関連して部落史研究の課題としてどう考えたらいいのか。

 いくつかの仮説を述べれば、‡@社会問題としての「部落問題」と、その根底にある「部落差別」と区別すること(これまでの部落史研究は部落差別ではなく、主に部落問題の解明だった)、‡A部落差別を身分差別とする通説を再検討してみること(部落差別を封建的な身分差別と考えるから、「解放令」以後の部落差別の残存の説明が難しくなる)、‡B前近代を含めて部落差別に貫通する特徴を、(身分差別ではなく)ケガレないしは賎視・不浄視として考えること、などが必要ではないか。

 そのうえで、昨年の交流会で提起があったように、近世と近代、近代と現代という移行期の問題を検討することが必要だろう。戦時下の問題については、蓮城寺秋幸「戦時下部落の生活と要求」(『部落解放』393号、1995.8)がある。

(文責:事務局)