調査研究

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2007.10.30
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貧困と学力問題研究会報告
2009年7月22日

1.「学校における外国人児童生徒支援のあり方―言語指導の側面から」

櫻井千穂(大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程)

2.「全日制普通科単位制高校における外国人生徒支援の取り組み」

濱名猛志(府立長吉高校)

最初に櫻井千穂(大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程)さんより「学校における外国人児童生徒支援のあり方―言語指導の側面から」について報告いただいた。

 日本の外国人児童生徒の現状は、文科省の「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受け入れ状況等に関する調査」(2008.8.13)によれば、「日本語指導が必要な」外国人児童生徒は、2万5441人(2007.9現在)で、2006年度の2万2413人より13.4%増加している。しかしここでの「日本語指導が必要な」という判断基準は、「日本語で日常会話が十分にできない児童生徒、及び日常会話ができても、学年相当の学習言語が不足し、学習活動への参加に支障が生じており、日本語指導が必要な児童生徒」となっており、「学習活動への参加に支障」をどう判断するかが大きな課題である。また、日本の現在の外国人児童生徒支援は、取り出し授業等の場において、生活適応指導や日本語の初期指導から、日本語による教科学習へとやっと目が向けられ始めたばかりである。よって、本来児童生徒が多くの時間を過ごす原学級との連携や、原学級そのものの在り方、また児童生徒の母語や母文化の重要性については十分な議論がされているとは言いがたい。こうした切り取られた文脈の中での、一部の技能習得のみが目的となった日本語指導のあり方は検討を要すると考える。

 外国人児童生徒に関する先行研究では、①PISA2003年度調査結果(読解力)では、1世(学齢期途中で移動してきた子ども)のみならず2世(現地生まれ)の移民の子どももネイティブの子どもと比較して読解力が有意に低いこと、②アメリカの英語学習児童生徒数は全児童生徒数4766万5487人の約10%で79%がスペイン語話者(ヒスパニック系)だが(バトラー後藤2008)、全教科において平均点以上の成績を取り、それを学校教育の最後まで維持できたのはバイリンガルプログラムだけで、このコースの子どもたちが一番ドロップアウト率も低かったこと(Thomas&Collier(2002))などが明らかとなっている。日本の場合、外国人児童生徒の言語能力の実態調査は少なく、特に読解力調査はほとんどないという状況であり、彼・彼女らにとって有益な支援を考える上でも、実態を把握するための基礎的研究が必要となっている。

 現在、発表者は国内の外国人児童の日本語読解力調査(中間)として、中国にルーツのある日本生まれの外国人児童63名(全員が日常会話レベルの日本語は流暢)と対照群として日本語母語児童36名の日本語読解力比較研究をしている。調査方法は、DRA-J(デベロプメンタル・リーディング・アセスメント-ジャパニーズ、ニューインターナショナルスクール開発)といい、段階的読書指導のアセスメントとして使用されている。具体的には、就学前(3・4歳)から中学2年生(14歳)までの児童生徒の読解力をレベル分けし、それに対応した日本語テキスト(現在47テキスト)の中から児童が読みやすいと感じたものを選び読んで再話し、教員の質問に答える(1人1時間ほど)。評価方法は、全発話データを文字化し、DRA読解力評価表に沿って教員と調査者の2名で、「予測・推測力」「音読の正確度」「読み行動」「語彙概念」「内容理解」(高学年は「要約力「読解ストラテジー」)等を採点する、というものである。特徴的な結果は、①日本語母語児童と比べ、音読の流暢度(外国人児童の場合、文字の拾い読みが多く、文や文節で捉える力が弱い:就学前の文字の識別能力?)や音読速度(漢字のみならず語彙そのものの識別能力?)、読書習慣で差があること、②外国人児童の中でも児童が家庭で中国語も使用するグループの方が、日本語の読解と再話の力が強い(保護者の言語が中国語であるため、家庭での言語環境の質と量が日本語読解力に影響する?)、という点が明らかとなっている。

 学校での支援として、①自尊感情を育てる環境作りが重要であり、その視点からも母語・母文化を財産化することを重視すること、②ことばの力を育てる授業作り(母語を使用した学び、多読・再話・ライティングプロセスの活動・リライト教材や絵・写真等の使用等々)が指摘された。

 次に濱名猛志(府立長吉高校)さんより「全日制普通科単位制高校における外国人生徒支援の取り組み」を報告いただいた。

 長吉高校は1975年創立され中国帰国生徒の入学に始まり、現在、アジアを中心としつつ南米の子ども等63名の外国にルーツがある子どもが在籍し、多文化共生の学校作りをしてきたが、2001年度から普通科単位制高校へ移行した。生徒は毎年6クラス240名募集し、進路状況は進学39名、就職45名、未定等37名(計121名)である。クラスや学年はなく、学校行事もエントリー制で参加率が低い悩みがあり、自己管理・責任の徹底が課題となっている。

 府立高校5校で、外国人生徒への「特別枠等入学」が実施されており、長吉高校もその1校であるが、定数の5%を、原則として中国帰国者又は外国籍、小学校4学年以上の学年への編入者に対し、数学・英語・作文(日本語以外も認める)の学力検査で選抜している。

 長吉高校のルーツ別在籍数は、中国(台湾)28名、フィリピン13名、韓国・ブラジル各8名、タイ3名、ベトナム2名、ボリビア1名で、日本語指導が必要な生徒は41名である。

学習支援は、人権文化部・情報管理部・教科担当者・各言語の教員・サポータが連携して生徒1人1人のニーズに応じた支援を基本とし、①日本語の学習は、1・2年各4時間、3年2時間の日本語学習、他の授業でも1年生のみ様々な教科で日本語学習の機会を設ける一方、多文化研究会(外国人生徒は基本、全員加入)での日本語能力検定1級合格を目標に毎週火曜日の学習会や夏・冬・春休みは自主的な学習会、②母語・母文化の学習は、選択授業として中国語・朝鮮語・ポルトガル語・フィリピノ語・ベトナム語・タイ語が3コースあり、多文化研究会でも教育サポータ制度を活用して学習、③多文化研究会の活動自体は、毎日活動や学校内行事(新入生歓迎会・ワイワイトーク・文化フェスティバル「世界の食べ物」・クリスマス会・春節会・テト・送別会)、学校外行事(母語・母文化に関する小中への出前授業等々)、④進路支援(入学年次の進路ヒヤリングと時間割作成・本人と保護者への正確な情報伝達・母語母文化を活かした大学受験)、等がある。翻訳や通訳・言語別懇談会など保護者支援にも力を入れているが、特に保護者同士をつなぐことに留意している。実際の進路状況は、1~6期生62名中、大学等38名、専門学校8名、斡旋就職9名、その他7名となっているが、進学後の課題は存在している。

 これからの長吉高校としては、外国人生徒や途中入学生徒・プレッシャーや集団に弱い生徒が安心して学べる学校づくりを、単位制高校(全国的には進学校化)という利点を更に活かして取り組んでいくと共に、卒業率の向上や学力面の向上、「やんちゃタイプの生徒」の活躍という課題にも力を入れていきたい。

(文責・中村清二)