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2006.01.17
世界人権宣言57周年記念大阪集会が開催されました。
2004年12月9日

「職業と世系に基づく差別」の撤廃をめざして

 クレオ大阪中央において世界人権宣言57周年記念大阪集会を開催、約830名が参加しました。
 今回初めて「職業と世系に基づく差別」をテーマにシンポジウム形式で12月集会を行いました。友永健三(当連絡会議事務局長、部落解放・人権研究所所長)さんの司会進行で、報告者4名からアフリカ、インド、そして日本の差別の現状と国連における取り組みについて報告、そしてこれまでの活動を通じた今後の課題についてそれぞれ提案がなされました。
 シンポジウムの後、集会アピールを土田良三さん(大阪同和・人権問題企業連絡会常務理事)が提案し、拍手によって採択されました。採択文は内閣総理大臣をはじめ日本政府関係者、「職業と世系に基づく差別」に関係する各国政府、大阪府、大阪市をはじめ各都道府県と日本国内のマスコミ・報道など関係諸団体、そして国連および国際NGOなどへ送付しました。
 シンポジウムの概要については以下の通りです。(文責 事務局)

●○報 告 者○●

アブドゥル・カマラさん(ADDHO(人権擁護のためのアフリカ会議)マイノリティの権利オフィサー、セネガル)
スカデオ・ソラットさん(ダリット学研究所所長、インド)
組坂 繁之さん(部落解放同盟中央本部中央執行委員長、日本)
鄭 鎮星さん(国連人権保護促進小委員会委員、「職業と世系に基づく差別」特別報告者、ソウル大学教授)


アフリカにおけるカーストに基づく差別

アブドゥル・カマラさん

カースト差別の起源 

「カースト」に基づく差別の現象はアフリカ全土を覆っていて、その歴史は古代の分業の出現に伴って始まりました。この時代に人びとはそれぞれ異なった活動を行う諸集団を形成するようになり、そこへ11世紀から16世紀にイスラム教とキリスト教が侵入したことでこれら諸活動に新しい概念や思想が育ち、カーストに対する侮蔑的な意味合いを持つ考え方が発達しました。その結果「カースト」という言葉は非人間あるいはアウトカーストと同義語になり、戦争で負けた人びとも被差別の立場におかれるようになりました。そして新しいキリスト教やイスラム教の社会は、一握りの統治者、自由人と被差別階層に当たるカーストを分類しながら、アフリカ社会に社会階層、封建制、そして君主制を作っていきました。

カースト差別の実態 ―セネガル、モーリタニア―

まずセネガルの状況についてです。セネガルには様々な民族集団がありますが、その全てに自由人、カースト、奴隷という3つの集団に区別される形でカースト制度はしっかり根づいていて、どのグループに属するかは全てそれぞれの出自によって決定されます。セネガルは民主国家であって、一つの宗教に縛られる国ではないにもかかわらず、カースト制度はセネガル社会に強固に根づいています。このカーストは姓(家族名)によって容易に識別することができるため、経済、宗教、政治等の分野で成功を収めた人は姓を変更することもあります。またカーストの党員の大半は所属政党から差別を受けており、政党の中には会議の場でカーストに属する党員に発言さえ認めない場合があります。さらにこの差別は結婚にも如実に現れており、カーストと非カーストとの結婚は大抵難しく、そのためカースト出身者が外国人との結婚を選ぶことも多いのです。この形態の差別は「カーストが穢れに通じる」とした不浄の概念に基づいています。つまり「触ってはならない、汚い、穢れている」ということです。多くの村では上位の社会階層出身の子どもは学校でカースト出身の子どもと机を並べることを嫌がったり、カーストに属する人びとは農業ができるだけの広い土地を取得できないために多くは貧しい生活を余儀なくされています。

モーリタニアでの世系に基づく奴隷制度に由来するカースト制度ですが、モーリタニアにはアラブ系ベルベル人(白人のムーア人)と、非アラブ系のネグロ・アフリカ人の社会集団が存在しています。両者の関係はムーア人が支配階級で、本来アフリカに起源を有するネグロ・アフリカ人が奴隷となりました。つまりムーア人の物として所有されることになったネグロ・アフリカ人は売買や物々交換の商品にされたり、例えば主人から神の教えの下にお前は地獄に落ちる等の暴言に従わざるを得ない状況にありました。

モーリタニアでは1981年にこの世系に基づく奴隷制度は廃止されています。しかし奴隷制度を廃止する法律ができても、それを効果的に機能させるメカニズムが備わっていません。またムーア人が優位であるのは司法の場でも言えることです。なぜならモーリタニアはイスラム教国であって、全ての法律はイスラム教の経典であるコーランを下にして書かれており、実際に裁判を行うイスラム教徒の裁判官も家に帰れば奴隷を所有しているからです。従って奴隷が逃げた場合や奴隷の所有に関する裁判などでイスラム教徒の裁判官は自分たちに都合の良い、奴隷制度を本質的に支持するような判決を出すことになります。

国際連帯と国連への期待

 全ての人間には本来誰かに身体を拘束されることなく、自由に生きる権利があるはずです。しかしカースト制度の下で被差別階層に属する人びとはその権利が奪われています。そのような差別を国際連帯によって、また国際レベルでの取り組みを通じて外交的な力でなくしていこうとする動きがあります。

 2004年11月30日から12月1日までネパールのカトマンドゥにおいて、カースト差別に関する国際諮問会議が国際ダリット連帯ネットワーク(IDSN)とネパール全国ダリット連盟によって開催されました。この諮問会議にはIDSNやネパールのNGOをはじめ、カースト制度と闘うNGOが日本も含めて世界中から集まりました。またNGO以外にも国連、国際開発機関、研究機関の専門家なども参加して、人種差別撤廃委員会が出したカースト等に基づく差別に関する一般的勧告29の実施の強化や、カースト差別根絶のための国際機関や政府の新しい措置などが議論されました。そしてこの諮問会議でカースト(部落差別も含めた世系に基づく差別全体を指す)及び「ダリットに基づく差別」の世界的な撤廃に向けて全ての利害関係者が取るべき具体的な手段が盛り込まれたカトマンドゥ・ダリット宣言が採択されました。

 一方、国連レベルで国際ダリット運動がどのような活動を行っているかについてですが、今年2005年8月の国連人権の保護および促進に関する小委員会(以下、小委員会)の開催期間中に、反差別国際運動(IMADR)をはじめ世界各国のカースト制度と闘うNGOから構成されるIDSNはチームを送り込み、様々な活動を行ってきました。ここでの反差別国際運動の取り組みは特に重要だったといえます。

チームのメンバーは「職業と世系に基づく差別」に関する国連特別報告者や国際労働機関の代表、そして人種差別撤廃委員会のメンバーなどとも会合を行い、その結果、国連特別報告者は「職業と世系に基づく差別」についての中間報告を小委員会に提出し、審議の後この報告書は同委員会で採決されました。そしてこの報告書に基づいて国連人権高等弁務官事務所は国連機関、政府、国内人権機関および経済社会理事会の協議資格を持つNGO、そして反人種主義・差別撤廃世界会議に参加した経済社会理事会との協議資格を持たないNGOに対して質問状が送付され、さらにアジアとアフリカにおいて地域会議、ジュネーブにおいて協議会合が行われる予定になっています。これら質問状への回答と地域会議及び協議会合の報告は、特別報告者が06年5月に提出する次回の中間報告の重要な要素になります。  

国際連帯の点ではイギリスと南アジアの長い歴史的関係から、イギリスでカースト差別に反対する活動が非常に活発であることが注目されます。最近もイギリス議会で行われたダリット連帯ネットワーク・英国の会議に私はインド、ネパール、日本からの友人と一緒に参加し、アフリカのカースト問題について発表する機会を得ました。このようにアフリカのカースト問題がイギリスだけでなく、世界中でさらに取り上げられるようになることを私は願っています。

 最後に今後に向けての課題ですが、まず人権問題に取り組むNGOは「職業と世系に基づく差別」を受けている人びとの権利が保護・促進されるようにその運動を強化しなければならないということを提案したいと思います。また既にカーストと闘っているNGOは世論を喚起するためにネットワークを強化して取り組みを充実させるべきです。カーストに基づく差別に関連して取り組んでいる国連諸機関はその仕事がより効果的に行われるように強化されなければなりません。さらにアフリカの主要国政府、アフリカ「人と人民の権利委員会」はカースト差別撤廃に向けた具体的なメカニズムを確立すべきだと思います。

ダリット・社会的排除と人権

スカデオ・ソラットさん

カースト差別と権利の剥奪

インド社会、とりわけヒンズー社会は、階層化された社会とその不平等によって特徴づけられます。その階層化されたカースト制度の特徴は、人びとを様々な社会集団に階級分けすることにあります。これら社会集団の区分は全てそれぞれの出生によって決定される仕組になっていて、どの階級に属するかによって人権の内容は大きく異なります。そして最も低い階級に位置づけられるアンタッチャブル(不可触民)に属するダリットの人びとには、上位カーストの人びとが享有するような人権は一切保障されていません。つまりダリットの人びとには財産権や教育権をはじめあらゆる市民的権利、あるいは穢れた仕事以外の職業に就く権利さえも認められず、唯一自分たちよりも上位カーストの人びとに隷属的に仕えることが役割だとされています。

またダリットには「穢れている人びと」という意識が定着している問題もあるために社会的な分離のみならず、「穢れている」が故に一緒に生活することができないという発想から地理的にもダリットの人びとは他と分離されています。インドの総人口は現在10億人といわれていますが、このような差別を受けているダリットは総人口のおよそ17パーセントを占め、インドにおける最大の社会集団を構成しています。またヒンズー教から他の宗教に改宗した元ダリットも加えると2億人に膨らむともいわれています。つまりインドは世界最大の身分差別の問題を抱えている国なのです。

 

これまでの変化とダリットの現状

このようなカースト制度の問題はインド政府も認識しており、1950年に制定された憲法でもカースト、ジェンダー、宗教、皮膚の色に基づく差別は明確に禁止されています。それ以外にも55年の反不可触性法(79年に市民権保護法に改名)や87年の残虐行為防止法がカーストに基づく差別を禁止しています。さらにインド政府はアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)も実施してきました。具体的にはダリットの人びとに対して公教育機関での教育の機会を保障したり、公営住宅や公務員の採用に際してダリットに特定の割り当てを与えたり、人口比率に応じて議会の議席をダリットに確保するなどという国家・公的部門での是正措置です。

 これらの法律や措置と国全体の発展から、ダリットの置かれている状況は肯定的に改善したと私は考えています。これは社会全体の経済発展によるところも大きいです。例えばダリットの非識字率や貧困状況の改善、政治的なプロセスへの参加の機会やダリットの公務員の増加などがあります。また保健、水、住宅、道路、学校やレストランのような社会的ニーズへのアクセス状況の改善などから、公的な空間での差別の減少も大きな改善といえます。しかし他の集団を比較するとその状況は劣悪だといわざるを得ません。例えばダリット以外のカーストでは貧困者層が全体の20%であるのに対して、ダリットは40%に及んでいます。また識字率もダリット以外が70%に対してダリットは60%、失業率もダリットは非ダリットの倍となっています。差別が起こるとダリットの人びとは警察に行って記録してもらうのですが、91年から10年間に差別事件として警察に届けられた総数は28万件に上っています。しかしこの数字はあくまでも公的に記録された数字であって、研究者らの調査結果からも実際にはもっと多くの差別事件が様々な分野で起こっていると考えられています。

またダリットを雇用から排除したり低賃金で雇用するという労働市場に見られるような経済部門における差別や商品売買等の商業活動、あるいは潅漑用水や公的及び私的サービスへのアクセスにおいてダリットの差別の深刻な実態も報告されています。

市民社会組織の努力 −国内レベルと国際レベル−

インドのダリットだけでなく、世界各地で同様の差別は今もなお続いている状況にあります。この差別にはこれまでと同じ形で続いているものもあれば、従来とは形を変えているものもあるわけですが、今後の課題として、国連はまずインドにおけるダリット差別を分析する必要があります。インドのダリット差別にはダリットは土地を持っていない、教育水準が低いなどという、3000年にもわたって人権を否定され社会的に排除されてきた歴史的事実が生み出した結果があるのです。そして今も続いている差別という2つの側面があるため、この両面から分析していかなければなりません。その上で私たちは過去と現在の両方に対する救済措置を国連に求めているのです。

私たちが議論している差別禁止の原則や先述の反不可触性法や是正措置などはこれらのうちの現在、あるいはこれから起こるであろう差別に対応するものであって、過去の差別及び社会的排除にはやはり補償という枠組みで考えなければならないでしょう。様々な国が戦争や差別の被害者に補償してきたのと同様に、国連も補償という姿勢を含めて差別の慣行がもたらした結果に対応していかなければならないということです。つまり今後は平等の機会を保障する原則と、現在・未来の差別についての規制策、そして過去から累積された差別による産物への補償という3つを兼ね合わせたもので対応していかなければならないということを第一に提案します。

 インドのダリット差別に対する法律や措置は公的レベルにおいては有効ですが、民間レベルにおいてはそうではありません。そのためダリットの人びとに対する民間レベルでの差別を具体的に規制する措置が必要とされています。2004年の「職業と世系に基づく差別」の拡大作業文書にも民間部門が提起されており、非常に歓迎されることです。しかし実際に民間部門でどう取り組んでいくのかを具体的に組み立てて、強調していかなければならないということを第二に提案します。また教育についても非常に重要です。インドでは高位カーストの人はダリットへの差別の問題に一切感心がなく、その人たちをいかに教育するかも非常に重要な課題といえます。従って国連の枠組みの中で高位カーストの人びとに対して人権教育を行っていくことも第三の課題として提案します。加えて反差別法を本当の意味で実施するよう促すことも提案します。インドにおけるカースト制度というのはヒンズー教の仕組からできているために非常に広範であると同時に、あらゆる場面で日常の無意識なレベルまで浸透しています。さらに難しいことに人びとは宗教の教えに基づいて差別しているため、そこに罪悪感は存在しないのです。これに対してインド政府は反差別法を施行したのですから、それをしっかり履行していくのは政府の義務であると国連の「原則と指針」を通じた勧告で明確にいちづけていってもらいたいのです。

昨今では企業のグローバル化が進み、世界中の多国籍企業が国境を超えて行き来しています。日本からもインドへの積極的な企業進出が行われているようです。しかしそれらの企業に機会均等の原則や是正措置などは反映されているのでしょうか。企業はこれまで海外に進出するに当たって国連のグローバルコンパクトやグローバル・サリバン原則といった様々な取り決めを相手国と行ってきましたが、これに加えて機会均等の原則や是正措置を反映した企業活動も今日求められているのです。そこでNGOであるIDSNはそういった側面をカバーするアンベートカル原則というものを1つのモデルとして提案しています。ぜひ国連でもこういった側面の原則を考えていってもらいたいです。

部落差別撤廃にむけた取り組みと今後の課題

組坂 繁之さん

部落解放運動の歴史

部落解放運動の歴史は1922年の全国水平社創立から始まりました。ここで出された水平社宣言で最も重要なポイントは、「人間は同情したり同情されたりするものでなく、人間は人間であるからこそ、その尊厳を大事にしなければならない、そして人間を尊敬することによって自らを解放せんとする者の集団運動を起こす」という点です。この水平社宣言こそが私たちの運動の原点であり、この宣言から離れた運動は解放運動ではないと言っても過言ではないでしょう。こうして創立された全国水平社の下、高松差別裁判闘争などの取り組みが行われてきましたが、戦前の運動で特質されるのは非常に厳しかったと言われる軍隊内の差別との闘いでした。また当時から自救行為として差別糾弾闘争が行われ、これが戦後の差別行政糾弾へと発展していくのですが、当時の水平社は糾弾闘争の時にだけ人が集まるまさに組織なき組織であったと言われています。それでも当時の解放運動は政府を押し動かし、当時の全国水平社中央委員会の松本治一郎委員長が1936年に衆議院に当選し国会で部落に対する施策を求めたのを契機に融和事業10カ年計画が打ち出されましたが、戦争に突入したために日の目を見ることはありませんでした。

戦後、1947年には参議院選挙で松本治一郎委員長が当選して参議院の初代副議長に就任しました。しかし。本来ならば第一党である社会党の松本委員長が議長になるはずが、それまで貴族院と呼ばれた参議院で部落出身者が議長になるのはおかしいという差別があり、松本委員長は副議長になりました。

受け継がれていく運動

1951年、京都で「オール・ロマンス」差別事件があり、これを契機に被差別部落の劣悪な生活環境を放置してきた差別行政に対する市民的権利を要求する差別行政糾弾闘争へと発展していきました。しかし地方自治体だけでは財政的に限界があるため、これを国に求めていく方向へ転換していき、自治体や多くの民主的な団体と広範な国策樹立の闘いを展開した結果、65年に遂に「同和対策審議会」答申が出されました。政府はここで初めて日本に部落差別が存在することを公式に認め、それをなくす義務と責任は政府にあり、その解決は国民的課題であることを明確にしました。しかしこれによって直ちに法律ができたわけではありません。その後も続いた全国展開でおこなった運動によって1969年に「同和対策事業特別措置法」が制定されました。この法律には功罪両方があったと言われていますが、部落の環境改善や奨学金制度の創設などによる教育レベルの向上等には大変役立ったと私は考えています。ただ同時にここに一部の利権や腐敗があったことは非常に残念に思っています。さらに付け加えるなら、この法律による環境改善事業に対する周辺地域のねたみ意識克服の取り組みが、今日各地で行われている人権のまちづくり運動へとつながっているのです。

触れておきたい出来事としては63年の狭山事件があります。これは未だに解決していない部落差別に基づく冤罪事件であり、私たちは勝利するまで断固として闘い続けていかなければなりません。そして「部落解放基本法」制定要求国民運動の展開や2000年の「人権教育・啓発推進法」の成立も重要な点です。最近では「人権侵害救済法」制定への取り組みが重要な局面を迎えています。これに対しては一部で人権そのものを押さえ込もうとする動きがあるようですが、何としても法制定を実現したいと考えています。

許してはならない差別の実態

まず挙げられるのは1975年の「部落地名総鑑」差別事件です。この事件発生から30年が経過していますが、2004年に発覚した行政書士による戸籍等不正取得事件では新たにパソコンのデータとして「部落地名総鑑」が存在していることが明らかになっています。依然としてこういった問題が水面下で続いていることに愕然としますが、今後は事実解明を進めて糾弾闘争を展開していきたいと考えています。

この他にも1998年大阪のアイビー・リック社差別身元調査事件、2003年の東京の連続・大量差別はがき事件があり、私たちは糾弾闘争を展開してきました。そして最近深刻化してきているのが、悪質極まりないインターネット上での差別書き込みの問題です。表現の自由は守らなければなりませんが、差別する自由は絶対に認めることはできません。今後はこのような問題にもしっかり取り組んでいきたいと考えています。

人間の尊厳を求める運動展開を

私たちは全国水平社創立以来83年にわたって解放運動を行ってきたわけですが、その中で明らかになった課題を国連が策定する「職業と世系に基づく差別」の撤廃のための原則と指針にもぜひ反映してもらいたいと思っています。そのポイントとして1つは当事者が団結し人間の尊厳を求めて運動していかなければならないということです。2つ目は日本における同企連や同宗連といった取り組みに示されているように、様々な人びとがそれぞれの分野で差別の撤廃を自分の課題として取り組まなければならないということです。そして国連を動かすためには人権NGOの国際的な連帯が重要であるということが挙げられます。また同時に私たち自身も日本でこの「原則と指針」を活用していかなければなりません。そのために日本政府に強く迫らなければならないのは人権侵害救済法の制定です。  

人権侵害に対しては規制と救済が必要です。そのため国連の国内人権機関の地域に関する原則(パリ原則)に則った法律を制定していかなければなりません。また1993年以降行われていない部落差別を撤廃することに役立つ実態調査の実施や部落問題を取り扱う責任ある部署を政府内に設置することも求めるなどの法体系の確立が今後の課題です。その上で被差別部落と周辺地域が連帯して人権のまちづくり運動を進めるなど、反差別の連帯共同闘争をさらに強化することが重要です。

国連における取り組み

鄭 鎮星さん

人権小委員会のイニシアチブ

カーストに基づく差別は、開発途上国のみならず先進国も含む世界の多くの場所で、膨大な人数の人びとの人権を最も深刻に侵害するものの1つです。国連は、1990年代が終わりを迎える頃になってようやく、カーストに基づく差別に対する闘いにおいて役割を果たし始めるようになりました。最初に人種差別撤廃委員会が、主として1996年にインドの報告書を審査する手続きの中で、カーストに基づく差別を集中的に取り上げましたが、その後ネパール、日本などの報告書審査の際にも同じ課題を取り上げています。

2000年8月、NGOや同委員会委員の多大な努力の結果、国連の小委員会は、「職業及び世系に基づく差別」の問題に関する最初の決議を採択しました。この決議は、人種差別撤廃委員会とは異なり、より一般的な「職業と世系に基づく差別」という表現でこの問題を取り上げました。これは、この表現を用いることにより、インドに加えて、スリランカ、ネパール、パキスタンといった多くの国に存在しているダリットの問題を、日本の部落民、イエメンのアクダムといった他の同様の問題とともに議論することを企図していたためです。

この決議において、小委員会は「職業と世系に基づく差別」は国際人権法が禁ずる差別の一形態であることを宣言するとともに、スリランカ人権専門家であるラジェンドラ・カリダス・ウィマラ・グネセケレさんに、このテーマに関する作業文書の作成を委託しました。委任事項には次の3点が含まれています。<1>職業と世系に基づく差別が依然として実際に経験されている社会を特定すること、<2>このような差別を廃止するために存在する憲法上、立法上及び行政上の措置を検討すること、<3>このような差別を効果的に撤廃するため、上記の検討結果に照らして適切と思われる更なる具体的勧告及び提案がある場合にはそれを行うこと、です。2001年、グネセケレさんはインド、スリランカ、ネパール、日本、パキスタンの状況について取り上げる一方、特に女性と子どもの状況に注意を払った最初の作業文書を提出しました。

アジアの状況に焦点を当てたグネセケレさんによる最初の研究の後、ノルウェーのアスビョーン・アイデさんと日本の横田洋三さんによる第2回・第3回報告書が作成されました。2002年の拡大作業文書でアイデさんと横田さんはその検討対象を広げ、西アフリカや北東アフリカの諸集団、ソマリ人の下位集団、イエメンのアクダム、イボランドのオス、南アジア・西アフリカ・ソマリア・日本のディアスポラ(離散集団)のコミュニティそして職業及び世系を理由として差別されているその他の民族的マイノリティの状況について取り上げました。また、これらの集団に共通する特徴、差別の原因となる諸要因とその帰結についても論じました。さらに2004年の拡大作業文書では、両氏はその他の集団の状況について論じるとともに、当該諸国の政府がとっている法律上・司法上・行政上・教育上の措置に関する情報を提供しました。また最後に「職業と世系に基づく差別」の撤廃のための原則と指針案の枠組みを予備的な形で提案しています。


国際社会におけるダリット問題への関心拡大

このように小委員会のこのイニシアテチブにより、ダリット問題に対する国際社会の関心はさらに拡大し始めましたが、他の地域における取り組みにも留意する必要があります。欧州議会は2001年に、「EU及びその加盟国に対し、カースト差別に関わる懸念の声を上げるとともに、インド、南アジアその他の場所で2億6千万人の人びとに影響を及ぼしている広範に広がったこの観衆に対抗するための戦略を策定する」よう促しています。またEUに対して、「その政策がどの程度、インドにおけるカースト差別及び不可触性の慣行の廃止に貢献しているかを調査」するよう求めています。そして「2002〜2004年・民主主義と人権のための欧州イニシアチブ計画文書」はカースト差別の問題に「注意が払われる」と述べています。デンマーク、オランダ、英国政府を含む欧州諸国の諸政府も、カースト問題に対するダーバン後の対応を議会で討議しました。

2002年、人種差別撤廃委員会は「世系に基づく差別」に関する一般的勧告29を採択し、「カーストおよびそれに類似する地位の世襲制度等の世系に基づく差別を条約違反として強く非難」すると勧告しましたが、この決定を導き出すために、NCDHR(ダリットの人権に関する全国キャンペーン;インド)やIDSN(国際ダリット連帯ネットワーク)の加盟団体が精力的に活動しています。

なお、小委員会は国連人権委員会(以下、人権委員会)の下部機関であり、一般的な原則と指針の提案を行うことによって、人権委員会のシンクタンク的役割を果たしています。小委員会は53の加盟国から構成される人権委員会とは異なり、26名の独立の専門家から構成されています。これらの専門家も自国の政府から指名されるとはいえ、政府から相対的に独立した立場をとることが可能です。また、同委員会は国連憲章に基づく機関であることから、活動を特定の条約に関わるものや条約に加盟した国々にも限定されません。そのため人権小委員会は国の特定の問題に焦点を当てるのではなく、人権侵害に関わるテーマ別の諸問題を幅広くかつ一般的に議論することができます。

小委員会の特別報告者の任命と原則と指針づくり

第56会期(2004年)に第3作業文書を受けとった後、小委員会は決議を採択して横田さんと私を特別報告者に任命しました。同決議は、私たちにそれまでの3本の文書を元にして、「職業及び世系に基づく差別」に関する包括的研究を行うことを委嘱するとともに、人権委員会に対してこの小委員会決定を承認するように求めました。2005年、人権委員会は決議によってこれを認め、経済社会理事会もこれを支持しました。

この決議で、小委員会は両特別報告者に対し、2005年に予備報告書を、2006年に中間報告書そして2007年に最終報告書を提出するよう要請しました。この決議に基づく委任事項の最大の焦点は、「職業と世系に基づく差別」の撤廃のための原則と指針案を完成させるところにあります。当該原則と指針案は、政府、地方当局、民間部門の団体、学校、宗教機関およびメディアを含むあらゆる関連の主体に宛てたものとし、適用可能な現行基準及び優れた実践例を基本として、また第3作業文書で提案された枠組み及び人種差別撤廃委員会の一般的勧告29の内容を考慮に入れながら作成するものとされました。特別報告者は、「職業と世系に基づく差別」に対応するためにとられた憲法上、立法上、司法上、行政上および教育上の措置に関するより包括的な情報を入手することにより、優れた実践例を特定することにもなっています。

 その後、同決議を受けて、横田さんと私は第57会期(2005年)に、政府、国内人権機関、国連システムの関連機関およびNGOへの質問状の作成に焦点を当てた予備報告書を小委員会に対して提出しました。また、この文書は2006年にジュネーブで一般的協議会合を開催することと2回の地域ワークショップ(アジアとアフリカで各1回)を開催するという提案を小委員会が支持するようにも勧告しています。これを受けて、小委員会は新たに決議を可決し、これらの提案を承認しました。、提案のあった地域ワークショップについては、資金が利用可能となるなら小委員会第58会期のいずれかの時点で開催することとされました。

2006年の中間報告の内容

2006年の中間報告書は、質問状への回答、2回の地域ワークショップおよび一般的協議会合の結果を同報告書の重要な基盤とし、注釈つきの原則と指針案を掲載することによって、最終目標に向けた重要な一歩となるでしょう。

同報告書では、これまでの文書で取り上げられなかった次のような内容について取り上げます。<1>被差別民の意識及び運動、<2>民間部門における差別、<3>特にグローバル化の過程にある市場における差別、<4>グローバル化によるカースト差別の階級差別の混合及び強化、<5>インド洋沖津波時のものを含む自然災害中の差別、<6>ダリットのコミュニティ内部における差別慣行(下位カーストの状況含む)、<7>政府開発プログラム、海外援助の配分等における差別、<8>武力紛争下にある地域の被差別コミュニティ、<9>教育上の差別及びカリキュラム開発、<10>命名制度およびその改革の可能性、<11>女性に対する複合差別、そして‡Kミレニアム開発目標(MDG)とダリット問題等との関係です。

原則と指針の適切な活用を

 私たちは、これまでの作業文書の内容を繰り返さないようにしつつ、「職業と世系に基づく差別」の全体像を提示したいと考えています。その項目は原則と指針の各項目に対応したものとなり、各項目には適切な法的注釈が付されることになると思います。私たちの活動の最終目標は、「職業と世系に基づく差別」の撤廃のための原則と指針を確立することであり、それが2007年の最終報告書の主な内容となります。これまでの報告書に基づき、また政府、NGO、ダリットの人びと、国連機関などのあらゆる関係主体の議論を反映させながら、私たちは原則と指針を完成させる予定です。

最後に、最も重要なことは原則と指針を適切に活用することであるということを付言したいと思います。原則と指針を広く周知させ、また政府その他の主体にそれを実施させるためのあらゆる努力が後に続かなければなりません。そのための方策として、<1>被差別のコミュニティ内の問題を把握、<2>国際レベル・国内レベルでのネットワークの強化、そして<3>国レベル・地方自治体レベルでの国内人権機関の設置、が考えられます。さらに、人権保障のメカニズムとして、アジアにおける地域人権機関の設置をも考慮すべきです。


・・・集会開催にあたって届いた祝電メッセージを紹介します・・・

本日の「世界人権宣言記念大阪集会が盛大に開催されますことを、心よりお慶び申し上げます。また、今年で創立57周年をお迎えになられ、誠におめでとうございます。

本日の記念式典を契機に、ご参集の皆さま方が一層団結を強められ、今後の更なるご活躍を心よりお祈り申し上げます。 私、おだち源幸も、皆さまとともに誰もが安心して暮せる豊かな国づくりのため、日本の諸課題に至誠の精神で取り組んで参ります。 

末尾ながら、本日ご参集された皆さまの益々のご多幸とご健勝を祈念いたしまして、お祝いのメッセージとさせていただきます。 

2005年12月9日
参議院議員 おだち源幸