本年は、ナチス・ドイツが1939年9月にポーランド侵攻を開始し第2次世界大戦が勃発して70周年に当たります。この機会に、ヨーロッパを中心に、第2次世界大戦の反省、とりわけナチス・ドイツによるユダヤ人をはじめとしたマイノリティの虐殺に対する反省がなされています。なかでも、スィンティやロマ(日本では差別的な意味合いが含まれている「ジプシー」と紹介されていますが、ここでは当事者自身による呼称を使用します)は、ナチス・ドイツ占領下で50万人を超す人びとがアウシュヴィッツをはじめとした強制収容所で虐殺されました。
近年の世界的な景気後退によって失業者が増大する中で、ヨーロッパ各地で再びスィンティやロマに対する差別が強まり、襲撃事件さえ生起するところとなっています。
2001年8月、ポーランドのアウシュヴィッツ国立博物館に「ナチス体制下におけるスィンティとロマの大量虐殺」に関する常設展示が開始されました。ここには、迫害と虐殺に関する生々しい資料が数多く展示されています。現在、この常設展示のカタログは、ドイツ語、英語、チェコ語等で発刊され、アウシュヴィッツ博物館を見学する人びとだけでなく、各国における理解促進に大きく貢献しています。
一方、日本では、スィンティやロマがナチス・ドイツによって虐殺された事実はほとんど知られていませんし、現在ヨーロッパ各地でスィンティやロマが被っている差別の実態についても無関心状況にあります。しかしながら、ヨーロッパで事業を展開している日本企業は少なくありません。多くの人びとがヨーロッパ旅行に出かけています。その際、ガイドブックには「盗難のおそれがありますから、ジプシーの子どもには気を付けて下さい」などと書かれているものが少なくありません。言うまでもなく、このような案内はスィンティやロマに対する予断と偏見に基づくもので、差別意識を助長するものとして人権の観点から厳しく指弾されるべきものです。
以上のような歴史と現状を考慮し、今般アウシュヴィッツ国立博物館 常設展示カタログ『ナチス体制下におけるスィンティとロマの大量虐殺』日本語版を発刊することと致しました。本書発刊の意義をご理解頂けます団体や個人の皆様にもご支援をお願いする次第です。
(呼びかけ文より抜粋)