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2006.09.13
事業報告


2005年事業報告

第64回総会 承認

2005年度の取り組みの概括

 2005年度研究所事業の概括を、以下17点にわたって報告する。

1.「職業と世系に基づく差別」の撤廃等に向けた取り組み

 近年、日本の部落差別やインドのダリットに対する差別等が、国連において関心を持たれるテーマとなってきている。とくに、国連人権促進保護小委員会では、これらの問題を「職業と世系(descent)に基づく差別」と規定し、この問題に関する特別報告者を任命し、2007年夏をめどに、この差別撤廃のための「原則と指針」のとりまとめをまとめることをめざしている。

 このため、部落解放・人権研究所(以下「研究所」と略)としても以下のような取り組みを実施した。

  • 特別報告者による調査に対して、部落解放同盟中央本部とともに回答書(日・英)の作成・送付(2006年2月)
  • 世界人権宣言47周年記念大阪集会のテーマとして「『職業と世系に基づく差別』の撤廃をめざして」を設定し、インド、アフリカ、日本、国連の特別報告者をゲストとして招いた集会(12月9日)、研究会(12月10日)等の開催
  • 部落解放・人権研究所編『日本から世界への発信 職業と世系に基づく差別』の編集・発刊(12月10日)
  • 国際ダリットネットワーク(IDSN)主催の「職業と世系に基づく差別」に関する特別報告者との非公式協議等に参加するとともに、国連人権高等弁務官ルイーズ・アルブールさん等への要請(2006年3月13-15日、スイス・ジュネーブ)
  • 「職業と世系に基づく差別に関するプロジェクト」の開催(4回開催)

 この他、国連人権委員会の「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人排斥と関連ある不寛容」に関する特別報告者ドゥドゥ・ディエンさんの日本公式訪問(7月2-11日)において、部落問題に関して資料を提供するとともに、被差別当事者と関係NGOからの資料収集に協力した。なお、2006年1月、公式訪問を踏まえた報告書が公表された。このなかには、部落問題をはじめとする日本の差別問題が、歴史的文化的観点から分析されているとともに、これらの差別撤廃に向けて重要な勧告が盛り込まれている。

2.「人権教育のための国連10年」の総括と「人権教育のための世界プログラム」の創造に向けた取り組み

 世界中に人権文化を構築することをめざし、1995年から取り組まれていた「人権教育のための国連10年」(「国連10年」と略)が2004年で終了した。この間の取り組みの総括を踏まえ、国連は、2005年から「人権教育の世界プログラム」(「世界プログラム」と略)に取り組んでいる。その第一段階は、2007年までの3ヶ年で、初等・中等学校制度における人権教育の推進に重点を置くことを求めている。

 このため、研究所としては、「世界プログラム」の普及・宣伝に取り組むとともに、大阪をはじめ各自治体で「国連10年」の総括と「世界プログラム」を踏まえた計画が策定されるよう世論喚起に努めた。

 また、文部科学省の下に設置された人権教育の指導方法等に関する調査研究会議によって「人権教育の指導方法等の在り方について 第二次とりまとめ[案]」(「第二次とりまとめ」と略)が2005年10月示され、パブリックコメントが求められたが、これに参加するとともに、2006年1月に公表された「第二次とりまとめ」の積極面の活用を各方面に呼びかけた。

 さらに、2005年から開始されている「国連・持続可能な開発のための教育の10年」についても、「持続可能な開発のための教育の10年推進会議」(ESD-J)に参加するとともに、普及・宣伝に取り組んだ。

 これらに関連した主な取り組みは、以下の通りである。

  • 『人権年鑑 2005-2006』で、「人権教育のための国連10年から世界プログラムへ」を特集・掲載した。
  • 大阪の自治体における「国連10年」の総括と「世界プログラム」を踏まえた取り組み状況に関する調査を実施し、提言を行った。
  • 部落解放・人権教育・啓発プロジェクト会合でこれらのテーマを取り上げ議論した。
  • 平沢安政著『解説と実践 人権教育のための世界プログラム』を発刊した。
  • 第36回部落解放・人権夏期講座、第20回人権啓発研究集会等のテーマとして取り上げた。

3.「人権侵害救済法」(仮称)等の制定に向けた取り組み

 2002年3月、国会に上程された「人権擁護法案」は、人権委員会の独立性、実効性、メディア規制等の問題を含んだものであった。このため抜本修正を求めた要請が、各方面からなされた。しかし、2003年10月、衆議院選挙に伴う解散のため同法案は、自然廃案となった。

 2005年3月、第162通常国会へ、再度同法案が若干の修正の上、提案される予定であったが、与党自由民主党内から、人権侵害の定義が曖昧である、人権委員会の権限が強すぎる、人権擁護委員の国籍条項を残すべきであるなどの批判が出され、最終的には国会に提案されない事態となった。一方、野党民主党は「人権侵害による被害の救済及び予防に関する法律案」をとりまとめ、国会に提出した。しかし、郵政関連法案の参議院否決に伴う国会解散で、実質的な審議が行われないままで廃案となった。

 2006年1月から、第164通常国会が開催されているが、政府与党は、自由民主党内で賛同が得られる法案を準備したいとの理由で、この国会への法案提案を見送ったとの報道がなされている。

 このような、「人権擁護法案」をめぐる国会での動向を踏まえ、研究所としては、「人権侵害救済法」(仮称)の必要性に関する研究と世論喚起、与党自民党の一部から出されている法案批判の問題点の検討等に取り組んだ。

 「人権擁護法案」をめぐる上記の動向は、2005年11月に制定された「鳥取県人権侵害救済推進及び手続きに関する条例」(「人権救済条例」と略)の施行にも少なからぬ影響を及ぼした。この「人権救済条例」は、若干の問題点を含んでいるものの、基本的には都道府県段階で包括的な人権侵害を救済するための委員会の設置を盛り込んだ画期的な意義を持った条例であった。しかしながら、この条例に対して、鳥取県弁護士会、鳥取県内のメディア関係等から、人権侵害の定義が曖昧であること、人権侵害救済委員会の独立性がなく権限が強すぎること、メディア規制が含まれていること、等に対する批判が寄せられた。この結果、2006年3月、鳥取県議会は、「人権侵害救済条例」の6月施行を凍結するとともに、「人権救済条例見直し検討委員会」を設置し、条例の見直しをすることとなった。

 「鳥取県人権救済条例」に関して、研究所としても基本的に評価し、補強する立場から研究、提言、世論喚起等に取り組んだ。

 この他、大阪府、大阪府人権協会、部落解放同盟大阪府連、研究所で構成されている「人権救済研究会」に参加し、「人権ケースワーカー」の必要性に関する検討を行った。

 これらの項目に関わった主な取り組を以下に列挙する。

  • 「人権侵害救済法」(仮称)、「鳥取県人権救済条例」に関する検討をマイノリティ研究会等でおこなった。
  • 雑誌『ヒューマンライツ』(2005年11月、2006年2月発刊)等での「鳥取県人権救済条例」に関する世論喚起。
  • 第36回部落解放・人権夏期講座や第20回人権啓発研究集会等で重点テーマとして取り上げた。

4.戦後60年、「部落地名総鑑」発覚30年にちなんだ取り組み

 2005年は、世界的には第2次世界大戦終結60年、日本的にはアジア・太平洋戦争で敗戦して60年という節目の年であった。第2次世界大戦の反省の中から、1948年12月10日、「差別を撤廃し人権を確立することが恒久平和を実現する道である」という考え方を基本理念とした世界人権宣言が採択された。アジア・太平洋戦争で、周辺諸国へ甚大な被害を与えるとともに、自らも広島・長崎への原爆投下に象徴される被害を被ったことを反省することの中から、1946年11月3日、主権在民、戦争放棄、基本的人権の尊重を三大原理とする日本国憲法が公布され、1947年5月3日に施行された。

 今日の世界と日本における平和と人権をめぐる状況を直視したとき、改めて世界人権宣言と日本国憲法の基本精神に立ち返り、これを発展させていくことが求められている。この観点から、部落解放同盟中央本部とともに、「憲法問題」プロジェクトを立ち上げ、2006年3月、「『憲法改正問題』への中間提言」をとりまとめた。今後、研究所会員はもとより、広く意見を求めていく中で、最終提言をまとめる必要がある。

 また、2006年3月結成された「人権の法制度を提言する市民会議」(「人権市民会議」と略)に積極的に参画した。

 2005年は、部落差別撤廃にとってもいろいろな意味で節目となる年であった。とりわけ、民間企業が部落問題をはじめとした人権問題に取り組むきっかけを作った「部落地名総鑑」差別事件が発覚し30年という節目にあたっていた。この年の末から本年1月にかけて、部落解放同盟大阪府連合会によって大阪の複数の興信所から3冊の「地名総鑑」が回収された。この内の1冊は第8番目に発覚した「地名総鑑」のコピーであったが、他の2冊は、それぞれ新たな種類の「地名総鑑」であった。しかも、部落解放同盟大阪府連合会の調査では、「電子版地名総鑑」の存在が確実視されている。

 こうして、「地名総鑑」差別事件は、今日なおも終わっていないことが明らかになったが、「地名総鑑」を所持していた調査業者が行政書士等に依頼し戸籍謄本等を大量に不正使用している実態も明らかになってきている。(愛知県では、調査業者自体が委任状を偽造して戸籍謄本等を不正入手していた。)このため研究所として、人権部会等での検討、本の出版、パネルの作成、講座での世論喚起等に取り組んだ。

 これらの項目に関連した、主な取り組みは以下の通りである。

  • 「憲法問題」プロジェクトの開催(5回)と中間提言のとりまとめ
  • 「人権市民会議」への参画
  • 人権部会等の開催
  • 二宮周平著『新版 戸籍と人権』の発刊
  • 第36回部落解放・人権夏期講座、第20回人権啓発企業啓発講座、部落解放・人権大学講座等のテーマとして世論喚起の実施
  • パネル展「写真で見る戦後60年 - 部落解放運動の歩み」・「部落地名総鑑差別事件30年」の開催に参画(2005年11月)

5.啓発企画室を中心とした取り組み

 人材養成事業の柱である部落解放・人権大学講座(第85-88期)は、講義内容の系統性を保つため、講義の配列や組み立てを充実させ、また、自己啓発助言者の協力を得るなかで、自由課題専門研究レポートの取り組みを強めることができ、受講生のモチベーションを高めることができた。

 研究集会など各種講座については、参加者の減少傾向や自治体の助成金がなくなるという不利な状況に対して、<1>魅力ある講座づくり、<2>参加呼びかけの強化、<3>コンベンション(観光誘致策)などの一般施策で助成金をカバー、<4>地元実行委員会との緻密な協力関係、<5>支出の削減などの努力を続けるなかで、一定の歯止めをかけることができ、成果を得ることができた。

 大阪府よりの受託事業である「人権教育・啓発相談事業」は、利用者拡大の働きかけを継続させたが、5%の微増にとどまり、一層の工夫と努力が求められている。同じく受託事業である「人材養成プログラム開発等整備事業」については、研究所内外の人たちの協力によって、職域における養成プログラムの報告書をまとめることができたが、人権啓発を推進している地域や職場のリーダーにとって、より使いやすく効果的なプログラムへと高めていくことが求められている。この他、大阪府、大阪市、堺市などとの共同制作である人権啓発ビデオも制作も委員の積極的な意見や提案などによって完成させることができた。

以下、啓発企画室の主な取り組みを報告する。

  • 部落解放・人権大学講座
      第85-88期、166名修了、第88期までの修了生4,094名
  • 部落解放・人権大学講座ゼミナールコース「人権啓発促進役養成講座」(全12回) 受講27名
      共催/国際人権大学大学院(夜間)プレ講座として実施 + 促進役経験交流会3回
  • 第30回部落解放・西日本夏期講座(大分県日田市)
      7月21・22日(木・金)、3,884名参加
  • 第36回部落解放・人権夏期講座(和歌山県高野山)
      8月17-19日(水-金)、1,943名参加
  • 第18回人権啓発東京講座(松本治一郎記念会館)
      10月4日(火)-11月25日(金) 延べ12日間、39名修了、聴講生265名
  • 第26回人権・同和問題企業啓発講座
      (第1部) 10月24日(月)、厚生年金会館、1,622名(申込人数1,786名)
      (第2部) 11月18日(木)、 同 上 、1,641名(申込人数1,887名)、合計3,263名
  • 第20回人権啓発研究集会(徳島県徳島市)
      1月24・25日(火・水)、3,808名
  • 社会啓発連続学習会(大阪人権センター)
      3月10日(金)、17日(金)、27日(月)(述べ3日間)、延べ100名参加
  • 人権教育・啓発相談事業
      相談件数/324件(2004年度比15件増)
  • 大阪府、人材養成プログラム開発等事業整備事業
      2004-2005年度、職域における人材養成プログラムに関する報告書づくり
  • 大阪市人権啓発推進員リーダー養成講座(テキストづくり)
  • 企同連人権ブックレット/人権研修の手引き・第22集『エセ同和行為を排除するために』
  • 『部落解放・人権入門2005』(部落解放・人権夏期講座報告書)の発行
  • 視聴覚教材の制作(大阪府、大阪市、堺市との共同事業)
      タイトル「人権感覚のアンテナって? - 人権侵害・差別が見えてくる」

6.研究部を中心とした取り組み

 研究部では、大阪市、滋賀県野洲市からの補助事業・受託事業に取り組んだ。大阪市の補助事業であるホームページ作成については、定期更新・内容充実の結果、月平均約8万名のアクセスにまで増加してきた。調査研究事業については、憲法問題プロジェクト、労働者の個人情報保護、キャリア教育と人権研究会、第2次・若年不安定就労問題(高校3年生進路意識)研究会等で報告書を出すことができた。また、2004年度事業であった食肉業・食肉労働に関するプロジェクト、人権のまちづくりプロジェクトの報告書も発刊できた。さらに、第2次・若年不安定就労問題(高校3年生進路意識)研究会では、科研費の対象ともなり研究の位置づけや財源確保に一定の成果を出せた。紀要については、各号ごとに編集委員会を本格的に開催し、企画強化に踏み出せた。

[具体] (下線があるものは報告書・単行本作成)

  • 受託事業
    • 人権教育・啓発プログラム開発事業(大阪市) … 労働者の個人情報保護
    • 人権教育啓発事業(大阪市)
    • 部落生活実態調査の分析(滋賀県野洲市)
  • 補助事業
    • 人権情報収集・提供事業:ホームページ作成(大阪市)
    • アクセス件数の増加 … 2005年度 931,740名 (2004年度 765,694名、166,046名増)
  • 研究所独自の調査研究事業
    • 憲法問題プロジェクト (2005-2006年度)
    • 維新の変革と部落(移行期研究) (2003-2005年度)
    • 都市下層と部落問題研究会 (2002-2005年度)
    • 旧長吏文書研究会 (2002-2006年度)
    • CSRと労働者の個人情報保護 (2005-2006年度)
    • CSRと企業報告書 (2005年度)
    • 部落問題に関する意識調査研究 (2005-2007年度)
    • 「職業と世系」に基づく差別プロジェクト (2005-2007年度)
    • 人権条例・人権のまちづくり研究会 (2005-2006年度)
    • 「就労困難な若者」支援研究会 (2005-2006年度)
    • キャリア教育と人権研究会 (2005-2006年度)
    • 教育コミュニティ研究会 (2005-2006年度) … 第4次
    • 若年不安定就労問題研究会 (2005-2006年度) … 第2次
  • 紀要『部落解放研究』の編集体制の強化(163-168号)
  • 部会活動の活性化
  • 嘱託研究員の委嘱

7.図書資料室

  図書資料室の事業は、貸し出しや相談活動の充実を図り、いずれも件数が増加した。新刊図書、雑誌、資料の受け入れも系統的に行っている。文献データベース、蔵書データベースの追加入力も着実に増加してきている。書庫の整理については、松本治一郎記念会館関係の資料整理を中心に取り組んだ。この他、パネル展「部落地名総鑑」差別事件30年に合わせて「部落地名総鑑」差別事件関係資料を展示・公開した。(2005年11月16-18日) また、研究所第63回総会の山文彦さんの記念講演に合わせて「松本治一郎記念会館旧蔵資料にみる松本治一郎・戦後の歩み」関係資料を展示・公開した。(2006年2月22-28日)以下、図書資料室の主な事業を報告する。

  • 貸し出し業務
    • 来館者/4,210人(前年度比391人増)
    • 貸出し/1,463人、3,472冊(前年度比102人増、390冊増)
  • 相談業務
    • 1,061件(前年度比183件増、前々年度比644件増)
  • 新刊図書、資料の受け入れ
    • 図 書/744冊(前年度比5冊増)
    • 雑 誌/170種類(前年度比11冊減)不定期含む
      • 一年間の新規図書の受け入れ冊数の目標は500冊を目標としているので、その目標は達成できた。
      • 雑誌については、定期的に発行されているものの受け入れ冊数は昨年と同様である。
    • ニュースレター/169種類(前年度比13種類減)
      • ニュースレターの受け入れが減少した原因としては、終刊したものがあったこと、不定期分の受け入れが減少したことによる。
  • 資料
    • 1,390冊(前年度比261冊減)
      • 資料の受け入れ冊数が、昨年と比較して減少しているが、市町村合併により、自治体数が減少し発行数が減少したことがあげられる。
  • 書庫の整理
    • 特に松本治一郎記念会館に保管されていた、松本治一郎、松本英一(敬称略)関係の資料の目
    • 録作成と資料整理
  • 文献データーベース、蔵書データーベースの作成公開
    • 文献データーベース 4,908件(総数29,041件)
    • 蔵書データーベース 8,276冊追加(総数 78,849冊)
    • 蔵書データーベースへのアクセス件数 204,989件
  • 『人権年鑑2005-2006』編集
  • 図書資料委員会の開催(2005年9月2日(金))
  • 資料展示
    1. 「部落地名総鑑」差別事件関係資料 (2005年11月16-18日)
    2. 「松本治一郎記念会館旧蔵資料にみる松本治一郎・戦後の歩み」関係資料

8.編集・販売部門を中心とした取り組み

 編集・販売部の取り組みとして月刊『ヒューマンライツ』などの定期刊行物を予定通り発行した。単行本については10点発刊している。研究活動を積み上げた『日本から世界への発信 職業と世系に基づく差別』、月刊『ヒューマンライツ』の連載から『変革の時代―人権システム創造のために』、『空襲と動員 戦争が終わって60年』、『メディアを人権からよむ』、歴史研究の成果を分かりやすく示したものとして『自覚と誇り 「大阪の部落史」を読む 近現代』、『続 人物でつづる被差別民の歴史』、新しいシリーズとしてヒューマンライツベーシック『解説と実践 人権教育のための世界プログラム』、同『新版 戸籍と人権』を刊行した。視聴覚教材は、2005年度制作の『人権感覚のアンテナって?-人権侵害・差別が見えてくる』を作成した。

  また、2005年度の販売状況は、前年比で減少傾向にあり、予算比で99%の売上高であった。一方で経費も削減している。内容的に見ると単行本を中心とした書籍部門において直販が昨年に比べて減少している。これは、2005年度は前年と比べて大規模な集会採用等が少なかったためである。視聴覚部門、『ヒューマンライツ』部門も減少傾向にある。視聴覚部門においては、新作ビデオが前年度に比べて売り上げがやや減少していること、『ヒューマンライツ』部門においては予算削減や市町村合併、企業の合併・倒産などの影響を受けている。今後とも、内容の充実、宣伝の強化、販路の拡大等に総力を挙げて取り組む必要がある。その一つの手がかりとして2006年度は編集販売委員会の活動を活性化させていく。

  • 定期刊行物
    • 『ヒューマンライツ』205-216号
    • 『部落解放研究』163-168号(研究部担当)
    • 『全国のあいつぐ差別事件 2005年度版』(研究部担当)
    • 『人権年鑑2005-2006』(図書資料室担当)
    • 『大阪の部落史 第二巻 史料編 近世2』(大阪の部落史委員会担当)
  • 単行本
    • 北口末広『変革の時代 - 人権システム創造のために』
    • 小山仁示『空襲と動員 戦争が終わって60年』
    • 平沢安政 ヒューマンライツベーシック『解説と実践 人権教育のための世界プログラム』
    • 二宮周平 ヒューマンライツベーシック『新版 戸籍と人権』
    • ダーク・スハウテン『メディア・アクション・プロジェクト 参加型学習とまちづくりのためのメディア実践モデル』
    • 中川健一『メディアを人権からよむ』
    • 秋定・北崎・渡辺編著『自覚と誇り 「大阪の部落史」を読む 近現代』
    • 中尾・黒川編著『続 人物でつづる被差別民の歴史』
    • 部落解放・人権研究所編『日本から世界への発信 職業と世系に基づく差別』
    • 池田寛著・研究所編『人権教育の未来 ― 教育コミュニティの形成と学校改革』
  • 受託出版(啓発企画室担当)
    • 『部落解放』臨時号(高野山夏期講座の報告書)
    • 企同連ブックレット22『エセ同和行為を排除するために』
  • ビデオ(啓発企画室担当)
    • 『人権感覚のアンテナって?-人権侵害・差別が見えてくる』

9.国際関係

 2005年度は、国連レベルでの「職業と世系に基づく差別」の取り組みが進み、日本における「現代的形態の人種差別」に関する調査が国連特別報告者により実施されたことにより、研究所の国際関係の事業もこれらの取り組みを中心に実施した。国際交流としては、韓国晋州の衡平運動の精神を受け継いだ活動や人権活動とのつながりが、様々な形でさらに強化された。国際連帯活動としては、「インド洋大津波の被災マイノリティ復興支援」の協力要請を前年度に続き行った。

 国連の機構改革に伴い、2006年3月、人権委員会が国連理事会に格上げされることが決定した。人権小委員会とその取り組みである「職業と世系に基づく差別」に関する特別報告者の活動が継続されるかどうか等、今後の国連における人権動向を注視していく必要がある。

 英文ニュースやホームページを介して、研究所の活動成果や部落解放運動の課題などを世界に発信していくことがますます重要になってきており、さらなる改善と充実が求められている。

 2005年度の国際関係の主な取り組みを以下に列挙する。

  • 国連「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人排斥と関連のある不寛容」に関する特別報告者ドゥドゥ・ディエンさんの日本公式訪問(7月2-11日)において、部落問題に関して情報を提供するとともに、被差別当事者と関係NGOからの資料収集に協力した。
  • 世界人権宣言57周年記念に関連して、「職業と世系に基づく差別」に関する人権小委員会特別報告者および研究者、NGO関係者を海外から招聘し、シンポジウムや研究会を開催した。
  • インド洋津波の被災者への復興支援活動を継続し、6団体23個人から60万円の支援金をいただき、反差別国際運動(IMADR)へ送付した。
  • 他団体による韓国晋州へのスタディツアーの企画に協力し、晋州からの人権活動調査を受け入れた。
  • 英文ニュースの発行(135-138号)
  • 海外からの各種問い合わせに協力
  • 「S.O.Sニュース」の発行 (月3回、年36号)
  • 世界人権宣言大阪連絡会議、同中央実行委員会の活動に参加
  • 反差別国際運動、同日本委員会等の活動に参加

10.大阪の部落史編纂事業

 2005年度の取り組みとしては、『大阪の部落史 第二巻 史料編 近世2』を編集・発刊した。概要は『大阪の部落史通信』38号に紹介されているが、ほとんどが新規史料で構成され、大阪の部落の産業や生活の生き生きとした動きが示されている。

 同時に、2008年度発刊の『通史編』の枠組みや執筆分担等についても検討を開始した。

 また、明治以降現代までの5巻分の史料集を基に、教材化に役立つことを目的に秋定・北崎・渡辺編著『自覚と誇り 大阪の部落史を読む 近現代』が発刊された。

11.国際人権大学院大学(夜間)構想の具体化に向けて

 国際人権大学院大学(夜間)構想の具体化に向け、以下に列挙するように拡大事務局会議や総会、さらにはプレ講座に積極的に参画した。

  • 拡大事務局会議に参画(10回)
  • 総会・記念講演会に参画(7月20日(水))
  • プレ講座(公開講座3コース)に参画

12.マイノリティ研究会

 マイノリティ研究会については、「人権擁護法案をめぐる動向について」および「人種差別撤廃条約を受けた国内法整備を考える」というテーマで2回開催した。

  • 研究会を2回開催した。
     人権擁護法案をめぐる動き、鳥取県の人権救済に関する条例制定をめぐる動き、人種差別撤廃条約を受けて国内法整備など、国内における人権の法整備に関するテーマを取り上げた。
     引き続き、時々の重要なテーマを取り上げていく。

13.原田伴彦記念基金

 原田伴彦記念基金は、2005年度で20年度目を迎えたが、運営委員会等各方面の協力を得て、本年度も以下に列挙する3事業を実施した。

  • ・第6回原田伴彦・部落史研究奨励金
    • 5件の応募
    • 4件に奨励金支給
      • 奥本 武裕 (奈良県大和郡山市在住)
        研究テーマ/「大和における本願寺教団の教線展開と『穢多』村寺院」
      • 菅澤 庸子 (京都府京都市在住)
        研究テーマ/「『帰化』廃止と国家体制の変質について」
      • 高野 昭雄 (京都府京都市在住)
        研究テーマ/「戦前期京都市における都市下層社会の形成」
      • 中西 宏次 (京都府京都市在住)
        研究テーマ/「被差別部落を校区にもつ小学校の学校史から見えるもの」
  • マイノリティ研究会へ助成
  • 国際人権人材養成事業
    • ジョージナ・スティーブンスさん(環境防災総合政策研究機構研究員、反差別国際運動ボランティア)
    • 派遣 (7-8月)
  • 運営委員会を開催(6月14日(火))

14.第1回部落解放・人権研究所識字活動支援「安田識字基金」に基づく事業について

 2005年6月末から7月20日まで、第1回「安田識字基金」に基づく助事業について応募を募ったところ、国外から1件、国内から5件の応募があった。7月19日に運営委員会を開催し、審査の結果、下記の国外1件、国内3件に助成を決定し、7月末に助成を行った。

  • 国外/1件
    1. IMADRアジア委員会(スリランカ)の「識字を通したエンパワメント」…50万円
  • 国内/3件
    1. 八尾市識字日本語連絡会(大阪府八尾市)「高砂日本語教室」…40万円
    2. 青春学校(福岡県北九州市)「識字の成果としての『自分史』の執筆支援-自らの人生と歴史をつなげる想像力の獲得に向けて」…10万円
    3. ききとり識字教材化委員会「『被差別部落の女と唄』の再構成と新たな識字教材の創造」(大阪府大阪市) …24万円

15.個人情報保護法施行に向けた諸規程の整備

 2005年4月より個人情報保護法が施行されることに伴い、研究所としても所内にワーキングチームを設置し諸規程等の整備に取り組み、以下の諸規程等を整備した。

  • 社団法人部落解放・人権研究所個人情報保護方針
  • 社団法人部落解放・人権研究所個人情報保護規程
  • 社団法人部落解放・人権研究所個人情報事務取扱要領

 今後、これら諸規程等の周知徹底と安全管理に向けた条件整備等に取り組んでいく必要がある。


16.組織の現状と機関活動

 研究所の組織の現状としては、正(個人)会員が743名(2004年度776名)、特別(団体)会員447口(2004年度446口)である。正会員、特別会員とも、更なる拡大に向けて取り組む必要がある。また、機関の会議である総会、理事会等は、定期的に開催してきているが、とくに総会への正(個人)会員の参加を高める工夫が必要である。所内の主任会議、職員会議についても定期的に開催されてきているが内容を充実していく必要がある。

  • 正(個人)会員 743名(2004年度776名、前年度比33名減) 拡大が必要
  • 特別団体(会員) 447口(2004年度446口、前年度比1口増)  拡大が必要
  • 総会
    • 第62回(2005年6月28日(火))、2004年度事業報告中心
    • 第63回(2006年2月24日(金))、2006年度事業計画中心
  • 理事会
    • 5月22日(土)、9月4日(土)、12月25日(土)、の3回開催
  • 主任会議 月1回開催
  • 職員会議 月1回開催
  • 個人懇談を実施
    • 3月27日(月)、28日(火)、29日(水)、の3日間で実施

17.その他

 2005年度、部落解放・人権研究所の諸活動を支えていただいた以下の方々がお亡くなりになった。

 生前のご支援に感謝するとともに、心からのご冥福を祈るものです。

  • 上田 卓三さん
     部落解放研究所の設立当初の理事、部落解放同盟大阪府連合会委員長、部落解放同盟中央本部中央執行委員長、衆議院議員等を歴任。2005年5月26日逝去、享年66歳。
  • 原田 百子さん
     故・原田伴彦部落解放研究所理事長の妻、原田伴彦記念基金運営委員。2005年11月30日逝去、享年88歳。
  • 小川 悟さん
     関西大学名誉教授、スィンティ・ロマの研究者。部落解放・人権研究所とドイツ・スィンティ・ロマ中央委員会との連携に尽力。2005年12月30日逝去、享年76歳。
  • 王 海青さん
     中華人民共和国国家民族事務委員会、部落解放・人権研究所と中国国家民族事務委員会等との連携強化に貢献。2006年2月18日逝去、享年56歳。
  • リム・スンマンさん
     アメリカ・ニュージャージー州ウィリアム・パターソン大学宗教社会学名誉教授、反差別国際運動副理事長。部落解放・人権研究所と韓国・晋州の衡平運動記念事業会等との連携構築に貢献。2006年3月5日逝去、享年79歳。