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2006.09.13

2006年度事業計画

第63回総会承認
→2006年度予算

【1】 研究所事業の基本課題

 2006年度の研究所の事業計画を検討する上で、最低限必要な内外情勢の特徴を以下に指摘します。

2003年3月、世界的な反対の世論を無視し、国連安全保障理事会の決議もないままにアメリカ等によるイラク戦争が開始され、やがて3年を迎えようとしています。この間、新しい憲法の制定、総選挙の実施等が取り組まれてきていますが、イラク国内の情勢は混迷を続けたままで、死傷者は3万名にもおよび、アメリカ軍の死者も2100名を超え、事態はベトナム戦争を想起させるような泥沼状況になってきています。また、日本の自衛隊が派遣されているサマワ地区でも、イラク住民の中から公然と自衛隊の撤退を求めるデモが展開されるといった状況が生起してきていますが、小泉内閣は、国会閉会中の2005年12月8日、自衛隊のイラク派遣の1年延長を閣議決定しました。

アメリカでは、2005年10月、イラク戦争の強行を主張した政府高官が、反対派を牽制するために違法な形で情報を漏らした罪で逮捕・起訴されるという深刻な事態が生じてきています。また、2005年8月、アメリカの南部諸州が巨大なハリケーン・カトリーナに襲われ、甚大な被害を出しました。巨大なハリケーンが次々と発生していることの背景には、京都議定書から一方的に離脱し、二酸化炭素を世界で最も多く排出し続けているアメリカの経済活動・ライフスタイルが横たわっていると言われてます。また、ハリケーン・カトリーナの被害は、黒人をはじめとしたアメリカのマイノリティに深刻な打撃を与え、今日なお、アメリカは国内において黒人をはじめとしたマイノリティに対する差別を克服し得ていない実情を如実に示すこととなりました。

2005年12月、マレーシアのクアラルンプールで東アジア首脳会議が開催され、東アジア共同体の構築に向けた協議が行われました。この協議は、この地域における紛争を戦争ではなく、話し合いによって平和的に解決していくための仕組みを構築していく上できわめて重要な意義があります。日本国憲法の精神からすれば、この協議で日本は中心的な役割を果たすことが求められているにもかかわらず、日本と最も近い国である中国や韓国の首脳との会談すらもてないという外交的に孤立している異常な事態があります。この背景には、小泉首相による靖国神社参拝の強行に代表される、戦争責任を曖昧にし、日本国憲法を踏みにじる姿勢に対するアジア諸国からの強い不信感と警戒が存在しています。

2005年9月に実施された総選挙において与党、とりわけ自由民主党が圧勝しました。この選挙戦を通して、「小泉劇場」とも表現されるメディアを巧みに活用した選挙戦術にマスコミが加担したことの問題性や、たとえわずかであったとしても小選挙区で多数を確保した政党が実際の得票数よりも多くの議席を獲得できるという小選挙区制度が持つ問題点が浮き彫りにされました。総選挙後、自由民主党は結党50周年の10月28日、「新憲法草案」を公表していますし、民主党も10月31日、「憲法提言」を発表しています。また、2006年の通常国会には憲法改正をにらんだ国民投票法案が提案されることとなってきています。

こうして、やがて制定60年を迎えようとしている日本国憲法を巡る論議が本格的に展開されるところとなってきています。日本国憲法が、第2次世界大戦の深刻な反省から生み出されたものであること、また、このため戦争放棄、主権在民、基本的人権の尊重を3大原理としていること、の持つ深い意味を改めてかみしめるとともに、この原理を今日の世界情勢に適応し、発展させていくことが求められています。

国際的な人権の面でもっとも注目される動向は、国連改革との関係です。2005年9月の国連総会における首脳会談において、従来の人権委員会を人権理事会に発展させることが決定されました。この結果、国連が中心的な関心を持つテーマとして人権問題を位置付けるようになった点は歓迎されることですが、人権理事会の努力によっても人権が保護されなかった場合、武力行使もあり得るという構想が検討されている点や、従来人権委員会の下に設置されていた人権促進保護小委員会(26人の専門家によって構成、人権小委員会と略)がなくなるおそれが大きいこと、さらには人権NGOの参加がどのように保障されるのかが不明確であること、等いくつかの重大な問題が残されています。

1990年代の後半に入って、国連は、日本の部落差別、インドをはじめとした南アジア諸国でみられるダリット差別、さらにはアフリカのいくつかの国に存在している同様の差別問題を積極的に取り上げるところとなってきています。たとえば人種差別撤廃条約の履行を監視するための人種差別撤廃委員会では、人種差別撤廃条約に基づくインド政府の報告や日本政府の報告書の審査において、これらの差別が条約第1条に規定する「世系(descent)」に基づく差別であるとして差別撤廃を求める勧告を出してきていますし、2002年8月には「世系に基づく差別に関する一般的勧告29」を採択しています。

また、国連人権小委員会も2000年8月、「職業と世系に基づく差別に関する決議」を採択し、これらの問題を取り上げるところとなってきています。

 その後国連人権小委員会は、この問題に関する3つの報告書の提出を受けた上で、2004年8月、さらなる調査を実施するとともにこの問題を解決するための「原則と指針」を2007年8月までにとりまとめるために2名の特別報告者(横田洋三中央大学教授・日本/鄭鎮星ソウル大学教授・韓国)を設置することを求めた決議を採択しました。この決議は、2005年の人権委員会、さらには経済社会理事会でも承認され、現在精力的な取り組みが展開されています。

 さらに、2006年1月に国連人権委員会の人種差別等に関する特別報告者ドゥドゥ・ディエンさんによる日本に関する報告書が公表されましたが、この中でも部落問題解決に向けた重要な勧告が盛り込まれています。

21世紀前半期を展望した部落問題解決にとって重要な意義を持っている地域改善対策協議会意見具申(「意見具申」と略)が出されて、2006年は10年目を迎えます。「意見具申」は、「基本認識」の中で、<1>四半世紀余に及ぶ取り組みによって改善されてきているものの、同和問題の解決は日本社会の重大な課題であること、<2>同和問題の解決をはじめとした足元に存在する人権問題の解決は国際的な責務であること、<3>今後とも同和対策審議会答申の基本精神をふまえ国・自治体・国民の一人一人が主体的に同和問題の解決に取り組む必要があること、<4>同和問題を人権問題という本質から捉え、残された課題の解決を他の人権問題解決と結びつけて取り組んでいくこと、等を指摘しました。

その上で、「意見具申」は、「今後の主な課題」の中で、<1>根深く存在している差別意識を払拭するための教育・啓発、<2>今なお続いている人権侵害(差別事件)に対して効果的に対応するための(規制)・救済、<3>教育、就労等の面で存在している格差を是正するための一般施策の活用、<4>施策の適正化、に取り組むことの必要性を指摘しました。このうち、教育・啓発の推進については、2000年12月に人権教育および人権啓発の推進に関する法律(「人権教育・啓発推進法」)が公布・施行されましたし、国連は、「人権教育のための国連10年」、さらには「人権教育のための世界プログラム」に取り組むことを各国に求めています。今後これらの積極的な活用が求められています。

周知のように2002年3月、「人権擁護法案」が閣議決定され国会に上程されましたが、人権委員会の独立性、実効性、さらにはメディア規制等の面で批判があり、2003年の衆議院解散とともに自然廃案となっています。しかしながら、今なお後を絶たない差別事件に対しては規制と救済のための法整備が不可欠です。このため早急に1993年12月、国連総会で採択された「国内人権機関の設置に関する原則」(パリ原則)をふまえた「人権侵害救済法」(仮称)が制定される必要があります。

部落問題を解決していく上で、教育や就労面等で存在している格差是正は決定的に重要な課題です。この点に関して、政府は1993年に調査を実施して以降、本格的な実態調査を実施していません。それ以降12年も経過している今日、早急に実態調査が行われることが必要です。なお、教育や就労等の面で残されている格差是正にあたっては、部落外で同様の状況下におかれている人々の実態の改善と結びつけていくこと、部落が良くなるとともに周辺地域も良くなるための「人権のまちづくり」が取り組まれることが必要です。

以上の、情勢認識の下に、2006年度研究所事業のうち基本的な課題を12点提起します。

1.「職業と世系に基づく差別」の撤廃にちなんだ取り組み

 国連・人権小委員会の下に設置された「職業と世系に基づく差別」に関する2名の特別報告者によって、2007年8月をめどにとりまとめられる「原則と指針」策定に積極的に協力していきます。また、国連改革において、特別報告者の取り組みが継続され、「職業と世系に基づく差別」が重要な課題として位置づけられるよう働きかけていきます。

 このため、2005年12月に発刊した『日本から世界への発信 職業と世系に基づく差別』の普及・宣伝、活用に取り組みます。

 また、職業と世系に基づく差別に関するプロジェクト会合を開催し、その成果を発信していきます。

 さらに、国連人権小委員会や国際ダリット連帯ネットワーク(IDSN)等が開催する「職業と世系に基づく差別」の撤廃のための取り組みに積極的に参加していきます。

2.「人権教育のための世界プログラムの実施」

 「人権教育のための世界プログラム」(政府仮訳は「人権教育の世界計画」)も2年目に入りました。各方面で、「人権教育のための国連10年」の総括を踏まえ、「世界プログラム」を活用した取り組みの推進が求められています。また、文部科学省の下に設置された研究会によって「人権教育の指導方法等の在り方について(第2次とりまとめ)」が2006年1月末にとりまとめられ公表されました。この積極面の活用も重要な課題です。さらに施行後6年目を迎えた「人権教育・啓発推進法」や、2年目に入った「持続可能な開発教育のための国連10年」の積極的な活用も必要です。

 このため、2004年12月に発刊された平沢安政著『解説と実践 人権教育のための世界プログラム』の普及宣伝・活用を呼びかけます。

 また、部落解放・人権啓発プロジェクト会合で、各方面での具体的な取り組について研究し成果を各種出版物で発信するとともに、各種講座のテーマで取り上げていきます。

3.人権・同和教育の視点を踏まえた「キャリア教育の開発」

 2005年12月の規制改革・民間開放推進会議「答申」に象徴される市場競争原理の考え方に基づき、学校選択の徹底、「差別越境」の自由化が画策されています。学校格差・階層格差の拡大を放置するならば、学習権保障の形骸化は不可避です。こうした教育の私事化、教育を受ける権利の「特権化」に対抗するには、同和教育の成果である学力保障と進路保障の取り組みを踏まえたキャリア教育の開発を進め、人権教育の新たな道を切り拓くことが重要です。このためキャリア教育と人権研究会等で「キャリア教育の開発」に取り組みます。

4.「人権侵害救済法」(仮称)の早期制定に向けた取り組み

 部落差別をはじめとした差別や人権侵害の現状、アジア・太平洋地域における国内人権機関の設置状況、日本が締結した国際人権諸条約の履行を監視する委員会からの勧告、国連総会が採択した国内人権機関の設置に関する原則(パリ原則)、人権擁護推進審議会からの人権委員会の設置等を求めた答申、独立性と実効性を備えた人権委員会の設置を求めた500を超す自治体決議等を考慮したとき、日本においても差別や人権侵害を規制するとともに独立性と実効性を確保した人権委員会を早急に設置することが求められています。

 2005年9月に開催された第163特別国会で、参議院の本会議において神本議員(民主党)の質問に対して小泉首相は「人権擁護法案の早期制定」に言及した答弁をしています。また、2006年1月から開催されている第164通常国会でも民主党の前原代表による質問に対しても、小泉首相は同様の答弁をしています。世論を高める中で独立性と実効性が確保された人権委員会の設置を含む法律が早期制定される必要があります。

 また、2005年10月制定された鳥取県人権侵害救済推進及び手続きに関する条例については、県弁護士会やマスコミ関係者からの批判があり、条例の施行が凍結されていますが、基本的に評価する立場から研究・提言に取り組みます。さらに、都道府県レベルでの人権侵害救済機関の設置に向けた調査・研究、提言が求められています。

 このため、マイノリティ研究会、人権部会、法律・狭山部会等でタイムリーな研究を行い、各種出版物や各種講座にその成果を反映させていきます。

5.部落問題解決に不可欠な実態調査の実施を求めた取り組み

 先にもふれたように、政府は1993年に実態調査を実施して以降、部落問題の解決に向けた実態調査を実施していません。その後、長期に及ぶ経済不況、2002年3月末の「特別措置法」の終了といった看過することのできない重要な変化が部落と部落で暮らす人びとに影響を与えています。これらの変化を踏まえた今日時点の部落差別の実態を明らかにすることは、今後の部落問題解決の方策を打ち立てていく上で不可欠な課題です。

 このため政府に対して実態調査を実施するようねばり強く働きかけていきます。

 また、福岡県、鳥取県、大阪府等で実施された実態調査結果の分析と活用に取り組みます。

 さらに、三重県や桑名市等で計画されている実態調査に協力していきます。

 このほか、大阪府が「同和問題の解決に向けた実態把握について」関係市町村に対して示した、<1>意識調査を活用した実態把握、<2>行政データを活用した実態把握、<3>相談事業を通じた実態把握、という手法等を基に調査・研究に取り組み、その成果を各種出版物等で普及していきます。

6.「人権のまちづくり」にちなんだ取り組み

 部落差別が優れて地域に対する差別であるという特徴、今日の差別意識や差別事件の内容を分析したとき「ねたみ差別」が強いこと、さらには、部落解放運動は居住地において自分たちが暮らしている地域を人権が尊重され住みやすい地域に作り替えてきている運動であるといった特徴を考慮したとき、部落における残された課題の解決を周辺地域が抱えている同様の課題解決と結びつけて取り組んでいく運動=人権のまちづくり運動は、決定的に重要な課題となってきています。

 このため、「人権条例・人権のまちづくりプロジェクト」や行財政部会等での研究を強化し、各種出版物や講座でその成果を広めていきます。

 また、2006年3月末で、市町村合併が一段落することから、部落差別撤廃・人権条例の今日的な実態を明らかにする調査にも取り組みます。

7.日本の法制度の確立に向けた取り組み

 日本は、1985年に女性差別撤廃条約を批准しました。その際、条約批准に伴う国内法整備の一環として、国籍法を改正し男女雇用機会均等法を制定しました。その後、男女共同参画社会基本法を制定し、審議会の設置、計画の策定、男女共同参画局の設置等に取り組んできています。しかしながら、国際人権規約の批准(1979年6月)、人種差別撤廃条約の加入(1995年12月)の際には、本格的な国内法整備が行われなかったという問題があります。その後の日本の人権状況、とりわけ部落差別や在日韓国・朝鮮人に対する差別、さらには在日外国人に対する差別の現状を直視したとき、国際人権規約や人種差別撤廃条約を受けた国内法制度の整備が強く求められるところとなってきています。

 このため、マイノリティ研究会や国際人権部会、人権部会等でこのための研究を積み重ね、関係の出版物や講座にその成果を反映させていきます。

 また、「人権の法制度を!市民連絡会議」(仮称)等の活動に積極的に参加していきます。

8.日本国憲法の「改正問題」にちなんだ取り組み

 自由民主党からの「新憲法草案」の公表、民主党からの「憲法提言」の発表という事態の進行の中で、いよいよ日本国憲法の「改正」論議が教育基本法の「改正」論議とともに大きな課題となってきています。また、2006年1月から開催されている第164通常国会では憲法改正に必要な国民投票法案が提案されることとなっています。

 先にも述べたように、日本国憲法は第2次世界大戦の痛烈な反省の上に制定されたものであり、<1>戦争放棄、<2>主権在民、<3>基本的人権の尊重という3大原理を堅持し、21世紀の世界の動向を踏まえ発展させる観点からの論議が求められています。

 このため、研究所としても「憲法問題プロジェクト」等での論議を積み重ね、各種出版物や講座等でその成果を公表していきます。

9.行政書士等による戸籍謄本等不正入手事件にちなんだ取り組み

 2003年7月、京都市において司法書士による職務上請求書を不正に使用し戸籍謄本等を入手したことに関わった結婚差別事件が発覚しました。2004年11月には、兵庫県において行政書士による職務上請求書を不正に利用した戸籍謄本等の入手事件が発覚しました。この事件の場合、不正に入手された戸籍謄本等は興信所等調査業者の求めに応じて行われたものであること、興信所間で部落地名総鑑の貸し借りが行われていた深刻な差別の実態(2006年2月1日時点で3冊の『部落地名総鑑』が回収されている)が判明してきています。

 また、この事件の究明活動の過程で、大阪、愛知、東京等においても行政書士による同様の不正行為が行われているという深刻な実態が判明してきています。折しもプライバシー保護法が施行された年、部落地名総鑑差別事件が発覚して30年という年に、このような深刻な差別の実態が明るみになってきているのです。今後、真相究明とともに、このような事件の根絶に向けて戸籍法や住民基本台帳法の改正、調査業者の部落差別調査を規制するための法整備等が求められています。

 このため、二宮周平著『新版 戸籍と人権』の普及・宣伝活用に取り組むとともに、各種講座等においてもこのテーマを大きく取り上げていきます。

 また、人権部会等においてもこの問題を取り上げていきます。

10.狭山第3次再審、司法の民主化に向けた取り組み

 2005年3月、狭山事件の再審請求に関わった特別抗告が棄却されました。国連自由権規約委員会などから求められていた証拠開示が行われず事実調べもないままでの一方的な棄却決定に各方面から強い批判の声が挙がりました。(研究所も抗議の声明を発表しました。) 弁護団は、2006年春をめどに第3次再審請求の準備を積み上げていますが、研究所としても法律・狭山部会、識字部会を中心にこの取り組みに協力していきます。

 また、えん罪を防止するために、取り調べ過程の可視化、証拠開示、代用監獄の廃止等司法の民主化についても法律・狭山部会、人権部会を中心に取り組んでいきます。

11.国際人権大学院大学(夜間)の実現に向けた検討の深化

 今日、人権教育や人権行政の推進、人権相談や人権救済の充実が重要な課題となってきています。また、人権NGOの強化も必要です。これらの課題を成功裏に推進していくために決定的に重要なものは人材の養成、とりわけそれぞれの分野の専門的な知識を身につけ、自らが担当する部署における実践と結びつけることのできるリーダーの養成です。

 一方、専門職大学院大学についても、この間、次々と開設されてきており、将来的には、インターネットを活用した専門職大学院構想まで論議されるところとなってきています。

 このため、2000年9月に結成された国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議の活動に積極的に参加し、実現に向けた検討を深化させていきます。

12.研究所の組織、財政基盤の確立

 2002年3月で「特別措置法」が終了したことをもって部落問題が解決したとする風潮、自治体財政の深刻化に伴う部落問題解決に関わった予算の削減等部落解放・人権研究所を取り巻く情勢は厳しいものがあります。

 しかしながら、部落問題を根本的に解決すること、またこれと深く関連している様々な差別を撤廃し日本における人権を確立していくこと、さらにはインドを始め南アジアに存在しているダリットに対する差別やアフリカにおいても存在している同様の差別を撤廃していくこと、などの面で研究所にかけられた期待は大きなものがあります。

 このため、正(個人)会員、特別(団体)会員の拡大に取り組むとともに、部落問題や人権問題に取り組む研究者、部落解放同盟中央本部や同大阪府連、大阪府や大阪市、さらには2006年4月に政令市になる堺市等の自治体、大阪人権・同和問題企業連絡会や東京人権啓発企業連絡会をはじめとした企業、『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議や同和問題にとりくむ大阪宗教者連絡会議、部落解放大阪府民共闘会議等との連帯を強化し、これらの期待に応えていく決意です。