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最終更新日2005.4.22
水平社宣言・綱領・決議

1922(大正11)年3月3日
全國水平社創立大會

宣言

 全國に散在する吾が特殊部落民よ團結せよ。

 長い間虐められて來た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によってなされた吾らの爲の運動が、何等の有難い効果を齎らさなかった事實は、夫等のすべてが吾々によって、又他の人々によって毎に人間を冒涜されてゐた罰であったのだ。そしてこれ等の人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。

 兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇迎者であり、實行者であった。陋劣なる階級政策の犠牲者であり、男らしき産業的殉教者であったのだ。ケモノの皮を剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖かい人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあった。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が來たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が來たのだ。

 吾々がエタである事を誇り得る時が來たのだ。

 吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行爲によって、祖先を辱しめ、人間を冒涜してはならなぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦る事が何であるかをよく知ってゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。

 水平社は、かくして生れた。

 人の世に熱あれ、人間に光りあれ。

 大正一一年三月三日

全國水平社創立大會

綱領

一、特殊部落民は部落民自身の行動によって絶對の解放を期す
一、吾々特殊部落民は絶對に經濟の自由と職業の自由を社會に要求し以て獲得を期す
一、吾等は人間性の原理に覺醒し人類最高の完成に向って突進す

決議

一、吾々に對し穢多及び特殊部落民等の言行によつて侮辱の意思を表示したる時は徹底的糾彈を爲す。
一、全國水平社本部に於て吾等團結の統一を圖る爲月刊雑誌『水平』を發行す。
一、部落民の絶對多數を門信徒とする東西兩本願寺が此際吾々の運動に對して抱藏する赤裸々なる意見を聴取し其の回答により機宜の行動をとること。

右決議す

 大正一一年三月三日

全國水平社創立大會