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書 評
 
評者渡辺俊雄
研究所通信241号掲載
斎藤洋一

「近世村落と部落

(『明日を拓く』23・24号、東日本部落解放研究所、1998年3月)

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 信州を中心とした地道な史料紹介。前提となる議論あるいは視点を2つ紹介されているのが重要。松下師一「近世初期の「服忌令」と「穢れ」意識の再編成について」(『史窓28号、1998年1月』)については、「村方においては、早くから「かわた(穢多)」身分は百姓身分から分離した状況下にあった」との指摘を紹介している。

 また朝尾直弘「近世の身分と賤民」(『都市と近世社会を考える』朝日新聞社、1995年)については、すでに1980年代の早い時期から、「身分の歴史的性格を規定するのは、右に申しましたように局地的、特殊的に形成された身分(実態)」であり、したがって「だれが町人身分であるかということは町が決定し」「だれが百姓であるかということは村が決定した」とする議論があったことを紹介している。私も、そうだろうと考える。