Home書評 > 本文
書 評
 
評者W.T
研究所通信237号掲載
竹永三男

『近代日本の地域社会と部落問題』

(部落問題研究所、1998年4月、A5判、362+7頁、7800円)

-----------------------------------------------------------------------------

 大正期の奈良県をフィールドに、<地域社会の中の部落問題>の究明という視角=方法によって、近代日本社会における地域の歴史的特質を究明しようとしてきた竹永さんの、1977年から96年まで『部落問題研究』などに発表された諸論文のまとめ。学位論文。

 結論的には、部落を含む地域社会の排他的かつ求心的な構造、経済的階層差や生産と生活サイクルの中から生み出される地域社会の階層的・複合的な秩序構造そのものの中に、部落に対する差別を温存・発現させる要因があること、そうした特質は部落の有無を問わず近代日本の地域社会の特質として一般化しうるものであり、そうした地域の秩序構造を民主主義的に変革することが歴史的にも(今日的にも)民主主義運動で課題であったが、1920年代の民主主義運動・社会運動はそうした課題を把握せず、従って実践もしえなかった、とする(P.345〜)。