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書 評
 
評者W
研究所通信236号掲載
森田康雄

賎視の歴史的形成

(解放出版社、1998年3月、A5版、220頁、3800円)

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 森田先生がこれまで、樟蔭東女子短期大学や部落解放研究所の紀要などに書かれてきた論文が纏められ、森田史学が一望できるようになった。

 関心は前近代から現代まで幅広く、13の論文が3章に整理されている。「?.賎視をめぐる制度と情念」では、森田史学の特質、地域社会における差別の問題を「かわた」身分だけではなく、「しゅく」や「おんぼう」などさまざまな被差別民との重層構造としてとらえようとする視点が、貫かれている。「?.近世かわた村の諸相」では、特に河内のある「かわた」村が担っていた「にかわ」(和膠)産業などが詳細に分析されている。

 そして「?.被差別部落における近代」では、近代における部落差別の問題や、水平社運動で活躍した平野小剣、戦後の京都や大阪の解放運動を支えた田中三郎の事跡などが紹介されている。ぜひ、ご一読を。