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同和地区における階層構造や、階層と教育達成との関連、親子関係の特徴などは、これまでの部落実態調査(学力調査も含めて)でもあまり焦点があてられておらず、十分な解明ができていない。
こうした問題意識の下、(1)部落と部落外の子どもが育つ家庭の階層の類型化、(2)類型にみられる親子関係の特徴、(3)部落と部落外の比較による親子関係の階層差と地域差、を明らかにすることを目的に調査を実施され、まとめられたものの一部が本論文である。全体としては、『同和地区における子育ての現状と課題に関する実証研究』としてまとめられているのので是非とも一読されたい。
調査そのものの概要は以下の通りである。
<同和地区調査>
実査時期 1995年10月下旬から96年2月上旬まで
調査対象 大阪市内・府内の13地区における小学5年生から中学3年生の子どもと両親の全数調査1674組
調査方法 配票留め置き法
回収状況 有効回収数 子ども728名と保護者(回収率43.5%)
<一般地区調査>
実施時期 1996年11月中旬から97年1月下旬まで
調査対象 大阪市内・府内の小学5年生から中学3年生の子どもと両親(主に、子育てにかかわる市民グループのネットワークを通じて調査依頼した)1000組
調査方法 配票留め置き法
回収状況 有効回収数 子ども781名と保護者(回収率78.1%)
調査結果から、部落と部落外との階層類型の特徴は次のように指摘されている
同和地区と一般地区とにおいて、階層類型として、<中産妻無職層><自営業共働き層><ブルーカラー妻パート層>については、類似の階層を見いだすことができた。
しかし、同和地区では、<ブルーカラー妻無職層>が高い比率を占めているのに対して、今回の一般地区では、この階層類型を見いだすことはできなかった。
他方、<ホワイトカラー妻無職層>は、一般地区では最も高い比率の階層類型であるが、同和地区ではこの階層類型を見いだすことはできない。
さらに、同和地区でも一般地区でも、夫婦ともにホワイトカラーで共働きの類型が存在するが、同和地区では、夫は高卒、事務・専門職、平均的収入で、妻は短大卒、専門・事務職、平均的収入という組み合わせを特徴とするのに対して、一般地区では、夫婦ともに大卒、専門職、平均以上の収入であることを特徴としており、両階層を同タイプの階層類型とみなすには無理があることがわかる。
部落と部落外との家族階層類型別に見た子育ての差異は、ここでは紹介できないが興味深いものがある。最後に“今後のさらなる研究のために”著者が示した「家族階層と子どもの教育達成に関する部落と部落外との比較モデル」を紹介しておきたい。