《第2回》
―松原第2中学校区に焦点をあてて―
報告書では、2中校区における学校と地域の協働を大きく2つの側面からとらえた。1つは「いきいきふれあい祭り」という学校で行われる校区単位の祭りで、その成立過程と経緯、祭りを支えたり、学校や地域の組織のコーディネートにたずさわる人物のルポ、祭りの波及効果としての地域組織の再編成について言及している。
もう1つは地域と協働することによって変化を遂げつつある学校の分析で、松原第2中学校を例に、地域教材を創造するプロセス、祭りや地域教材をもちいた実践による子どもや教師の変化について記述している。
2中校区の「いきいきふれあい祭り」は、校区にある小・中学校の教師達の「こんな取り組みをやっても面白いんじゃないか」という思いつきがきっかけであった。そこに地域のさまざまな人達が、さまざまな思いを持って参加するようになった。
ある青少年指導員は「子ども達に声をかけるのに、むこうがすこしでもこちらのことを知っていたら話を聞いてくれるはず」と考え、ある空手の指導員は「今の子ども達が大人になったら思い出してくれるような新しい“ふるさと”づくりが必要だ」という思いを持って参加している。
そんな地域の人々の中には、祭りの運営の中心になったり、当日を含めて祭りに関わる団体や組織を飛び越えて「潤滑油」のように人々の関係を取り結ぶ人物が出てきた。そのような魅力あふれる「キーパーソン」の一側面が報告書では扱われている。
また、祭りをきっかけにしてできた人々のつながりは、さまざまな形で波及効果をもたらしつつある。小学校で行われている「学校週5日制推進事業」には多くの地域の人々が集い、子ども達との積極的な交流が行われるようになった。
祭りの実行委員会は2000年から「地域教育協議会」に移行し、祭り以外の場面でも学校と地域の協働を模索する体制が整いつつある。これ以外にも、「やったろう会」のように、祭りでできた大人同士のつながりをベースにスポーツ交流を行う団体も出てきた。PTAや地域のスポーツを指導する団体、学校関係者が一堂に会する場が設けられるようになり、それぞれ個別に子どもと関わっていた人々が、お互いを知り、情報交換できるようになった。
一方、学校の方でも祭りが行われるようになる前後から地域との関わりを密にし、授業実践をゆたかにする取り組みが行われてきている。松原第2中学校では、労働体験、国際理解、福祉といったテーマで地域の人々に関わってもらい、子ども達の多様な学びが展開されてきている。
報告書の中ではそのような取り組みがつくられていった経緯が扱われている。そこには、身近な「地域教材」に触れることで思わぬ発見や成長を遂げる生徒たち、そしてそのような生徒たちの変化に驚かされ、突き動かされる教師の姿があった。
そういった取り組みは生徒や教師に何をもたらしているのだろうか。教室では決して「優等生」とは呼べない生徒たちも、そういった学習の場面ではいきいきとし、彼らなりの達成感を味わっているし、一方周りの生徒や教師達にとっては彼らのまだ見ぬ面を発見する「とらえなおし」の機会になっている。
教室では子どもと教師の関係は固定され、そういった生徒たちはえてして閉塞感を覚えがちだが、教師は、このような機会は生徒との関係を作る絶好の機会であるととらえている。
さらに報告書では、教師の多忙感などが問題となる中、教師達がなぜこのような取り組みを積極的に行っているのかということについても踏み込んで分析し、地域との協働を支える教師像の一端が明らかになっている。