Home書評 > 本文
書 評
 
評者中村清二
研究所通信263号掲載
岸裕司

『学校を基地に<お父さんの>まちづくり元気コミュニティ!秋津』

(太郎次郎社、1999年3月、A5判202頁、定価1800円)

-----------------------------------------------------------------------------

 1980年に東京湾の埋立地に誕生した千葉県習志野市立秋津小学校を舞台に、元気で“乗り乗り”のお父さん、お母さん、そしておじいさん、おばあさんの活躍を記した書である。著者の人物像を想像させるようなとにかく、楽しい愉快な本である。

 その活躍の拠点は、3年がかりで1996年度からオープンした、小学校内の「コミュニティルーム」である。1階の余裕教室4室と校舎裏の畑用敷地約30?、陶芸窯つきの小屋の地域開放である。

 これらは、“秋津コミュニティ”(前身は秋津地域生涯学習連絡協議会)に設置された「秋津小学校コミュニティルーム運営委員会」によって管理され、年間のべ1万2000人の利用がある。

 具体的には、(1)お盆・年末年始の若干の閉館日以外、年間を通して土日、祝日、春夏冬休みも含めて、朝9時から夜9時まで無料で誰でもが使え、(2)コミュニティルームへの出入口は独立して、閉校時は他の教室に行けないようにシャッターを降ろすので学校管理上の問題も特になく、(3)常駐の管理者をおかず、運営委員のうちの7人による鍵の貸出し管理、等々である。

 誰がどのように利用しているかの一端は、右記の「秋津コミュニティ」に登録しているサークル一覧からもうかがえる。詳細は本書をご一読いただきたい。

 これらはPTAの充実と学校教員の具体的な協力なしには実現できなかったし、その過程も単調なものではなかったことも、さまざまなエピソードを交えて紹介されている。

 こうした地域の、社会教育の豊かさが、学校教育の豊かさにも発展していっている。「授業になった、地域との10の融合事例」として

  • 学校おはなし会(国語科・全学年全学級で毎学期一時間)
  • クラブ活動(特別活動・4〜6年生。登校の毎土曜日2時間)
  • 秋津っ子まつり(児童会活動・全学年・年1回)
  • 学校と地域の合同大運動会(体育・全学年・年1回)
  • 校内音楽会(音楽科・全学年・年1回)
  • 高齢者とのふれあい(特別活動・6年生)
  • 高齢者に手紙をお届けする(生活科・1〜2年生)
  • 苗を販売し「生きる力」を養う(生活科・2年生)
  • 高齢者に鈴虫を届ける(生活科・2年生・97年度)



があげられ、詳しく紹介もされている。

 さらには、「地域防災」と「まちづくり」にまで発展していこうとしていることも興味深い。

 しかし、1番印象深く残ったことは、大人が本当に「楽しみ」をもってこうした活動に関わっていることである。そうなる秘密がどこにあるのか。それは是非、本書をご一読いただきたい。 

秋津コミュニティのサークル一覧(1999年2月現在)

★各種製作関連

工作クラブ(各種工作物)

秋津陶芸同好会(陶芸)

陶の会(陶芸)

アトリエ(絵画や造形物)

彩の会(水彩画)

生協ふれ合いネットワーク(パッチワークや手芸品)

うらの畑(季節の野菜・草花づくり)

★音楽関連

コンソートクラブ(リコーダー/バロック音秋津合唱サークル(合唱)

童謡サークル「赤い靴」(合唱)

秋津ミュージックサークル(大正琴&キーボード)

To Advance(高校生のロックバンド)

★演劇関連

劇団「蚊帳の海一座」(演劇公演のための練習)

さんた19(演劇公演のための練習)

ぴんくのこぶた(人形劇など)

★語学関連

英会話サークル(英会話・入門レベル)

パラムの会(朝鮮語)

★その他、勉強会関連

秋津パソコン倶楽部(パソコン&PC通信の勉強・製作)

図書館について勉強する会(図書館のありかたについての勉強)

★運動関連

自彊術(じきょうじゅつ)(身体じゅうの関節を動かす健康体操)

リズムダンスファクトリー(リズムダンス)

★児童主体のスポーツ関連

秋津サッカークラブ(サッカー/子ども&指導者・保護者)

秋津ボーイズ(野球/子ども&指導者)

秋津ミニバスケットボールクラブ(ミニバスケット/子ども&指導者・保護者)

ユニホッケー(ユニホッケー/子ども&指導者・保護者)

★教育関連

秋津小学校PTA(PTA活動)

秋津学童父母の会(児童の親の会)

秋津幼稚園PTA(幼稚園のPTA活動)

秋津保育所父母の会(保育所の親の会)

★地域会議

秋津まちづくり会議(秋津地区全体の統括会議)