-----------------------------------------------------------------------------
序章でもふれられているが、本書の内容は、第1に、「総合学習」「評価」「ニューカマー」「障害児」をテーマに、東日本の4つの小学校をエスノグラフィをもちいて描写したものである。
近年、「フィールドワークの手法を用いた調査研究、またその成果としてまとめられた文章・テキスト」であるエスノグラフィが注目されている。本書を読んだ第一印象は、その読み易さと描写された場面が目に浮かぶような具体性であった。分析内容の評価は、各位がぜひ一読された上で検討いただきたいが、エスノグラフィをもちいた時の大事な要素として、読み易さとありのままの姿の描写は不可欠だと思う。
第2に、上記4事例をふまえた、今後の小学校教育の理論的考察である。「学力」「個性」「平等」の3つのキーワードにそってまとめられている。結論的な箇所をみれば、第1に、個と集団のバランスをとる中で、「集団に埋没するような性格」でもなく「唯我独尊的な性格」でもない「個性的な人格」を実現していくこと、第2に、学校の不易の部分である「基礎学力」(=読み書き能力)と今日的な社会状況が学校に要請している「コミュニケーション能力」の保障が求められていること、第3に、総合教育や多文化教育の中で、「機会=入口」「結果=出口」「プロセス=途中」の平等と共に「関係性自体の変革」が大切なこと、を指摘している。
そして、子ども達が「友達がいるから学校が楽しい」と語ることの中に学校改革の基盤があり「さまざまな人と関わりがもてて、友だちとともにタメになる勉強ができ、そして自分らしさを心おきなく発揮できる場所それが21世紀の小学校の基本的なイメージである」と明快に指摘している。是非一読を。