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書 評
 
評者中村清二
研究所通信245号掲載
岡山元行

児童生徒の人権に関する意識の研究
―人権意識の定着と自尊感情の関わりについて」

(『滋賀県総合教育センター 平成9年度 同和教育に関する研究』1998年)

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 本論文は「研究の仮説」にもある通り、「人権意識」や「家庭環境・学校生活」と「自尊感情」との関わりを、児童を対象に36項目にわたる調査項目の質問紙法で得た結果より分析したものである。

 これまでの部落(人権)問題の意識調査は、基本的には、部落(人権)問題への認識や理解度そして態度などを明らかにする枠組みであったが、本調査は「自尊感情」をキーワードに人権(部落)問題意識との関連性を調査・分析している点で極めて興味深い。

 具体的な調査対象は、小学6年生123人(2校)、中学2年生404人(2校)、高校2年生535人(2校)の計1062人を対象とし、調査項目は、?自尊感情の因子を「受容感覚」「勤勉性感覚」「自己不信感覚」「自己表現社交性感覚」の4点、?生活に関する意識では、保育所(園)幼稚園の頃、小学校低学年の頃の楽しさ、現在の学校、家での生活の楽しさの4点、?人権意識では、学級内での人権、男女問題、外国人問題、障害者問題、人権(同和)学習、同和問題の6点、で構成している。

 調査結果や分析の内容はここでは紹介できないが、全体的傾向として、自尊感情と人権意識には深い関わりが明らかに出てきている。しかし、その自尊感情が図でも明らかなように、小学6年生でもあまり「高く」なく、さらに高学年になればなるほど「低く」なっていることに大きな危惧を覚えた。

 「今後の課題」でも指摘されているように、?自尊感情の因子やその設問の妥当性の研究、?自尊感情を育てる学級集団づくりや同和教育の内容、その指導方法の研究、は大きなテーマである。

 また、こうした調査の問題意識でもって、成人の意識調査も実施していく必要性があることを強く感じた。