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「学校革命」というハデなタイトルに少し違和感を覚えたが、読み終わって、それにはこだわらなくなった。
本書は、1980年頃に福島県三春町の教育長になった武藤さんを中心に、8つの小・中学校(学年1〜2クラス)で始まった教育改革の実践をまとめたものである。
1 「『画一的教育からの脱却と子どもの人権の復活』を教育課程という客観的な計画に求め」るという創造的教育観の確立と教育内容、方法の改革、 2 オープンスペース、図書館を学校の中心に、教科教室型の学校運営、等、新しい教育を支える施設、設備の改革、 3 地域住民の教育参加、を教育改革を推進するための目標として立て、基本方針化することからその第一歩が始まる。
しかし、月例の校長会(「学校経営懇談会」)の中でも「学力向上」と「生活指導」に議論が向かい、特に中学校では高校進学の成績と校内暴力・校則をどうするのかという、どこでも話題になっていることが大きな課題としてすぐ出されきており、「基本的な教育観」の確立=改革の下ごしらえに3年間を費やしている。
第2のステップは、町長の提案の下、「学校建築研究会」が、本書の著者でもある長澤さん(建築計画学)をはじめ、大高正人といったそうそうたる建築家、個性化教育研究の第一人者・加藤幸次(上智大学)、元文部省文教施設部長といった教育、行政の専門家の参加の下、具体的な学校新築、大改修として進み出したことである。この研究会の場は言うまでもなく、各学校の教職員との議論においても、やはり「教育観」が学校建築の具体的な計画を通して議論されている。「『学校建築は教育をつくる』という共通認識が生まれたことは大きな収穫」であったという指摘も、新しい学校を使った教員の創造的な実践紹介とあわせて興味深かった。
また、最終章の中の「地方教育委員会よ 立ち上がれ!」では、子どもに対する緊急責任として、 1 つねに地域に開かれた教育委員会、 2 教員の質向上のための教育センター、教材センターといった条件整備、 3 学校図書館の充実、を提案されているのもおもしろい。
解放教育の取組みは、全体的には人権・部落問題学習を中心に大きな成果を上げてきているが、授業、教科の分野においても成果をどう上げていけるのかが今日、問われてきてる。三春町の各校のこうした教育実践からも吸収していけるものがあるような気がした。この点からも、さまざまな意味において困難な課題をもつ子ども達の姿にも焦点があてられた叙述があればよかったが。