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1999〜2000年度の2年間にわたって「企業と社会委員会」が検討してきた研究課題をまとめられたのが本書である。「はしがき」にも「合理性と効率性を第一義に考え、株主利益至上主義を信条とする米国企業が、環境、人権への配慮、雇用の公平性確保、地域社会への貢献といった、企業の社会的責任をも重視し、これに対して積極的な取組みを示しており、消費者や投資家の支持も得てきている」ことに特に注目したこと、こうした動きを先取りして「事業戦略や企業行動に組み込み、今後の競争力の強化につなげていくべきだ」と指摘している。
そのために、(1)社会的に責任ある企業行動の実践に向けた具体的取組み課題を「ガイドライン」(別表)を提示し、(2)特に地域社会の関わりについては、本業の強みを活用し地域社会の発展に継続的にコミットしていくこと、NPOや行政とのパートナーシップを強化すること、などを提起している。
企業と人権・部落問題との関連性を考える上でも貴重な"提言"である。欲をいえば、「人権」がもう少し明確に位置付けられればとも感じたが。
また企業がこうした社会的責任を遂行していくことを支える、企業の情報公開やその社会的評価、社会責任投資などによる「誠実さ」の市場での競争力化、といった社会的条件づくりも指摘している。この点も重要な見逃せない点である。
いずれにしろ、こうした「ガイドライン」が個々の企業の中で着実に具体化され、そして社会から支持され大きな成果をあげていくことが期待される。