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1970年代後半のアメリカで確立された「経営倫理学」が、日本でもようやく90年代に入り注目され始めた。
1993年には日本経営倫理学会が発足し、企業行動研究部会、企業行動綱領研究部会、理念・哲学研究部会、監査研究部会、経営倫理実証調査研究部会の5つの研究部会が動いている。98年には経営倫理の実践を啓発普及する経営倫理実践研究センターも発足している。
また1997年には「SocialAccountability8000(SA8000)」という労働環境の統一化された国際標準規格が、ILOや国連の人権条約をふまえて米国のCEP(経済優先順位研究所、『より良い世界のためのショッピング』の発刊で有名)により作成され、認証が進められている。日本でも麗澤大学経済研究センター(企業倫理研究プロジェクト)が、企業倫理基準を体系化した「エシックス2000(倫理法令順守マネジメント・システム規格)」を策定している。
これらの背景には、グローバル化と市民社会の成熟の中で、企業をとりまくステークホールダー自体大きく変化してきたこと、その中で、従来の「効率性」「競争性」の原理だけでなく、「人間性」「社会性」の原理を経営倫理の中心におくべきであるという考えが抬頭してきたこと、がある。
「人間性原理」の具体化の基本ポイントとして、(1)人権尊重、(2)差別廃止、(3)公正処遇、(4)自主創造、であり、「社会性原理」の基本ポイントは(1)情報公開、(2)公正対応、(3)迷惑防止、(4)社会貢献、であるとしている。さらにこれら8ポイントを具体的に自己評価する例示表を示している。
企業における人権・部落問題への取組みの現状が、差別身元調査事件などで問われているが、そもそも「経営倫理」そのものが企業内でどう位置づいているのか、その中で部落問題はどう位置づいているのか、という視点から改めて検討してみる必要性を、考えさせられる。