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女性差別と部落差別は、「二重差別」「複合差別」とこれまでも部落解放運動の内部でとりわけ女性の中で語られたり、議論されることはあっても、文書にはなかなかならなかった。上記2冊は、「聞き取り」という手法を用いて、部落解放運動内部の女性差別に焦点を当て言及している。
「これまで、女性差別は、部落内部の問題としてではなく、部落外部の「共闘」の課題とみなされてきた。なぜ、このようなずらしが生じたのか。すなわち、部落解放運動内で女性差別を告発することは運動内の分裂を招くとして、一方の優先は他方の不利益とみなされていたのではないか」と斎藤は、指摘する。
斎藤論文は、ある被差別部落の住環境整備に関する運動の経過と、その運動の中心的役割を果たした一人の女性の生活史をもとに分析を加えている。その女性はアメリカ人の父と部落出身の母を持ち、「混血」として部落内外から「異質」「周縁」視されるだけでなく、長女が障害者であったことからも「異質」視された。
そして女性であるということで、解放運動の中心メンバーとして参加したことに対するさまざまな”圧力””批判”も彼女にかかった。しかし、それ故にこそ、逆に寛容性や反差別の資質を養うことができたのではないか、また運動を成功に導けたのではないか、としている。そして、実際の運動の現場には、さまざまな「異質性」や「他者性」が存在しているにもかかわらず運動が維持されているというよりは、むしろそれらが存在しているからこそ運動が成功する場合がありうることを分析している。
内部の性差別をはじめ、あらゆる差別・抑圧に「無関心」でなく、「内なる差異」にいかに向き合っていくのかが運動の発展の鍵を握ると強調する。
『ひょうご部落解放』の特集号も部落解放運動内における女性差別について、この1年間「解放運動の中の女性」研究会で議論されてきた内容についての特集を組んでいる。
部落解放運動の中での女性の位置、例えば、女性が女性を規制し、運動の中心は常に男性、女性はお飾り。女性は自分の能力を開発し、自己変革する機会が与えられない。「一人の顔を持った人間としてなかなか見てもらえない」など部落解放運動の外への闘いと内なる闘いを抱えて奮闘している姿が、聞き取りから浮かびあがってくる。
このように全国各地で部落女性が部落解放運動の内と女性解放運動内におけるマイノリィティ女性の解放について、声をあげ、運動の改革が始まっている。こうした調査研究が各地から取り組まれ、その交流が進められることを期待している。