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ほぼ全国の都道府県や主だった政令指定都市において取り入れられつつある政策評価、行政評価。自治省内でも研究会を設置してガイドライン的なものを作成中という。こうした関心の高まりとは逆に大半の自治体は『模様眺め』という状況もある。
今井照論文は、『評価』をめぐる混乱が生じており、その第1の理由は、自治体行政の『外部』と『内部』から違った関心事に基づく『評価』の波がきているが、それに自治体の『基本政策』『中間政策』『個別政策』の体系が有機的に対応できていないこと、第2に自治体議会による『政治評価』がみられないこと、第3に政策体系と予算体系が違っていること、の3点を理由として指摘している。しかし、自治・分権時代に『評価』は不可避であり、模様眺めになっている自治体が『評価』に踏み出すための条件を示している。
山本清論文は、『評価』の基礎理論となっている『新公的経営管理(NPM)』の特性と限界を示し、今後の課題を示している。例えば、『若年層による犯罪防止や環境保全などは、行政サービスの対象である目標集団やその基盤である地域社会との相互作用として、効果が発現する』のであり、NPM的手法の適用には大きな制約があること、住民は行政サービスの顧客であると同時に、株主および主権者である以上、『評価』としては顧客の視点だけでなく、納税者の視点(支出に見合う価値)、議会、首長(執行部の統制)、行政(学習、改善)の視点等も必要なこと、そして、計画・予算・実施の各段階における住民参画の必要性を示している。
『評価』における“人権”の位置付けを考える上でも重要な観点と思われる。