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昨年、法務省人権擁護局に設置された人権施策推進審議会の動向が今日、大きく注目されているが、本論文は今後の展望を考える上で多くの重要な点を示唆している。
第1に、人権教育・啓発・被害者救済・加害者制裁という方向は、「形式的意味の人権行政」を基準にしたものである。これに対し福祉・医療、住宅、労働etc.、すべての行政分野で人権は位置づけられるべき「実質的意味の人権行政」を基準にすると、環境アセスメントのように、人権アセスメントといった行政への人権影響評価システムの制度化が重要となる、という指摘である。
もちろん「形式的意味の人権行政」が、「実質的意味の人権行政」の一部であることはいうまでもない。
第2に、人権影響評価システムは、これまでの先駆的役割を果たしてきた同和行政(当事者参加型で部落問題に限られてはいたが「実質的意味の人権行政」を具体化)を引き継ぐものである、という指摘である。
第3に、人権擁護施策推進法では教育、啓発の討議を依頼するのは「法務大臣、文部大臣、総務庁長官又は関係大臣」とあるのに、現実には「その他関係大臣」は全く関与していないこと、その状況に対し人権擁護推進審議会の委員の大半は何もせず、一部が問題点を指摘しても事務局に却下されている、という指摘である。
第4に、人権被害者の救済、加害者の制裁は、 1 人権擁護委員の活性化による人権侵害状況の調査活動、 2 被害者が一時的に身を寄せる避難所(シェルター)の設置、 3 市民参加型の人権委員会の設置、という方向が現実的ではないか、という指摘である。
第5に、人権施策は「まちづくり」施策の一環であり、自治体が固有の事務として人権行政の分権化を進めていくべきである、という指摘である。
是非とも「特集・知ってほしい人権行政」の各論とあわせて一読いただきたい。