(『季刊労働法』187号、1998年12月)
-----------------------------------------------------------------------------
1998年6月、労働省の「労働者の個人情報保護に関する研究会」より報告書が出された(『季刊労働法』187号に同じく掲載)。
本論文も冒頭で指摘しているように、「個人情報保護一般とは異なり、労使関係の『特殊性』を考慮してその保護のあり方を検討しなければならない」時期を、非常に遅ればせながらも日本もやっと意識し出した表れといえる。
本論文は、「個人情報保護と労働分野におけるその国際基準」を詳細に説明した上で、「わが国における現行法の対応と問題点」について、「収集」「利用・保管」「伝達」「閲覧・訂正」「防止・救済」の全般にわたり指摘されている。
特に、昨年7月大阪で発覚した差別身元調査事件に関連して「収集」の箇所は興味深い。あるいは「性格検査」に対しても、「わが国では、不思議なことに疑問視されることは今までほとんどなかったが、逆に諸外国では、その正確性ないし信頼性、その差別的な影響、およびプライバシーにかかわるその多様な質問事項などを理由に、性格検査に対して一定の規制が加えられている」と指摘されている。
さらには、「閲覧・訂正」では「実務界では、もうすでに多数の企業が、労働者に対し自己情報を閲覧し訂正することを認めており、個人情報の閲覧・訂正は労使間のルールの一つとなっている」と指摘し、客観的な事実に関する情報に対しては、評価情報と違い、現在でも積極的な対応が企業に求められているとしている。では採用段階で「収集」された求職者の情報の場合、誰がどう閲覧・訂正することができるのか関心が寄せられる。いずれにしても、差別身元調査等の問題を普遍的な「労働者のプライバシー保護」の視点から考えていく上で、必読の論文である。