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書 評
 
評者西村寿子
研究所通信245号掲載
大阪市における児童・生徒の男女平等意識調査報告書

(1998年3月、大阪市、B5判192頁)

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 この調査は、「男女平等教育を的確に推進するためには、まず、男女平等に関わっての青少年の考え方や生活実態などを把握しておくことが重要」という認識の下に大阪市立の小学生、中学生、高校生約3000人を対象に男女平等に関する意識と実態についてアンケート調査した結果をまとめたものである(調査の実施は1998年1月)。

 調査の構成は、上の目的に基づいて「児童・生徒の性別役割意識に関する意識や行動を把握し、また、ジェンダーにかかわる意識の規定要因と思われる、家庭生活、学校生活、友人関係、メディアの影響を考察するとともに、進路と将来イメージも調査項目に加えた」としており、調査内容は次の項目である。

・「女らしさ、男らしさ」に関して

・性と男女平等に対する意識

・家庭生活の実態と平等感

・友達とメディアの影響

・進路と将来のイメージ

 一読しての印象として3点ある。

 第1に、まだまだ「女らしく・男らしく」という性別役割に基づいた子どもへの期待や行動の規制が多く見られるということ、しかも、それは女子に対して顕著であるということである。たとえば、小学3年女子では半数以上が「女らしく、女のくせに、女だから〜できない」と言われており、小6・高3では、66%以上が言われている。

 第2に「女らしさ・男らしさ」が「ある」「ない」と思うようになった影響として、同性の友人、マンガ・雑誌などのメディア同性の親の影響が中3・高3とも上位3位に入っており、家族や友人、メディアなどのインフォーマルな世界での影響が大きいことが分かる。学校教育での「建て前」よりも「本音」の世界の影響が強いということか。身近なものからの影響の大きさに対していかに自己を確立していくのかが課題だ。メディアの影響力の大きさの指摘とともに「メディア・リテラシー」の重要性が指摘できる。

 第3に、この調査は男女平等に関わる意識調査だが、他の人権問題に関わる意識とどのような関連が見られるのか、また、単に男子・女子という区分ではなくその子どものバックグラウンド(被差別部落・外国籍・障害など)によってジェンダーと関わってどのような意識の状況にあるのか、もうすこしトータルに把握しないと学校での課題も見えてきにくいのではないか。同時に、男女平等教育が他の人権教育とどう接点をもちトータルな人権教育としての展開の可能性があるのかについても今後、議論する必要があるのではないかと思った。