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部落差別、民族差別、障害者差別と女性差別についてはこれまで、体験的にはさまざまな表現でその複合的な関わりが指摘されてきた。部落女性の体験する差別についても部落出身であるがゆえに女性差別も強く蒙るとか、逆に部落内では女性差別について感受性が薄いという表現で指摘されてはいる。
本論文は、2人の部落女性への口述生活史の分析を通じて、部落差別と女性差別の複合的な関わりについて問題提起するものである。
筆者の問題提起へのスタンスは、女性に関する研究をする場合に被差別の立場の女性を視野に入れなければ、その研究に基づく教育、運動、施策など被差別の女性を無意識のうちに排除するのではないかという問題意識によっている。
たしかに、これまで数多くの部落実態調査が実施されてきたがジェンダーの視点が貫かれて設問の設定や集計がなされてきたかどうか、検討される必要があると思う。
ここでは、2人の女性の生活口述史に限ってはいるが、 1 「部落出身」であることによる女性差別の不可視化、 2 「女性」であることによる部落差別の隠蔽、 3 「女性」であることによる「部落出身」の無微化、 4 「部落出身」であることによる女性差別の深刻化という複合した差別の関わりが指摘されている。
今後、この研究をきっかけに部落女性の実態や研究の課題についてさらに豊かな視野が開けることが期待される。