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部落マイノリティ(出身者)に対する結婚忌避・差別に関する分析

部落解放・人権研究所刊
A4判70頁頒価1000円(税別)

 本報告書は、被差別部落マイノリティ(出身者)に対する結婚差別を軽減・解決するために、第一に結婚差別が生じるメカニズムを解明すること、第二に具体的な事例にもとづいた検討・分析を行うことにより、結婚差別を乗り越えるための諸条件を析出することを主たる目的としている。

 第1章「結婚差別のメカニズム――結婚忌避・差別はなぜ起こるのか?」では、主に、部落マイノリティと部落外マジョリティとの間に起こる結婚差別について、その要因と実態を明らかにすることを目的としている。まず、結婚差別を発生させるメカニズムとして、従来結婚差別の要因として説明されてきた「家意識」「偏見」のみならず、配偶者選択のメカニズムそのものが、重要な影響を与えていることを明らかにしている。

 続いて結婚差別と通婚の状況について、これまでに行われてきた調査のレビューをもとに考察を行っている。そこでは、(1)通婚は一貫して増加しているものの、結婚差別の体験量そのものは減ってはおらず、部落外マジョリティの忌避的態度も依然存在すること、(2)通婚が増加した理由としては、見合い結婚から恋愛結婚への結婚形態の変化、部落の就労構造の変化、忌避的態度の減少があげられること、(3)通婚率は増加傾向にあるが、人口比を考慮した場合にはかなり少なく、何らかの婚姻バリアが存在すると考えられること、を明らかにしている。

 さらに、部落出身者から見た結婚差別のとらえ方について、データを元に検討している。最後に、マクロな意識調査から得られた知見から、結婚忌避・差別の今後の展開について述べるとともに、今後、実態を把握するために取り組むべき課題について若干の提言を行っている。

 第2章「部落マイノリティ―部落外マジョリティの通婚にみる結合―分離要因の事例分析」では、インタビュー調査にもとづく個別の通婚事例について分析を行い、部落マイノリティと部落外マジョリティとの結合要因と分離要因を析出し、結婚差別を乗り越えるための諸条件を明らかにしている。

 「おわりに」では、第1章と第2章で得られた知見についてまとめ、結婚差別を軽減・解決するために、若干の提言を行っている。

 なお、本報告書末には、今後の結婚差別研究の基礎的なデータになると思われる解放令以降1975年までの「結婚・恋愛に関する差別事件年表」(資料1)[部落解放研究所編1990,1992]と、「部落問題における結婚に関する文献」(資料2)を掲載している。