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2004.02.02
書 評
 
評者N.S
研究所通信238号より

阪野 修

「部落解放・福祉そして協同組合」

『部落解放研究』121号(1998月4月)

 福祉国家(政策)の危機、地方分権化と第3セクターの発展、施設入所型から在宅(地域)福祉への再編etc.という世界的な流れの中で、NPO(民間非営利組織)に代表される「共(協)的セクター」の意義と期待は、公的セクター(行政)や私的セクター(企業)以上に大きくなってきている。

 他方、大阪の部落解放運動は「自立」を一つのキーワードに「新しい福祉運動」を進め、無償(有償)ボランティア、高齢者事業団、ワーカーズ・コレクティブ(労働者協同組合)など、さまざまな形態での取組みを始めている。

 こうした中で、阪野論文は解放運動の中期的にめざすべき取組みの形態として「協同組合」を指摘している。創造的な取組みが何よりも求められる分野では、「雇われ人根性」の克服は不可欠である。その点で、各自の出資金の提供を前提にその額にかかわらず、皆が経営に参加しかつ働き、そして経理をオープンにする協同組合は、一つの最適な組織形態だからである。

 さらに、同論文では、発想の転換として、

  1. 「介護を受ける人=高齢者」という固定観をはずし、意欲、可能性をもつ「ヤング老人」が部落にある解放会館などの諸施設や豊かな人間関係といったプラス条件を活用して、部落外の人ともネットワークを作りながら「主人公」として活躍していくべきこと
  2. 公的セクターと私的セクターそして共(協)的セクターの特徴と役割・限界を明確にし、連携の方向を地域ごとに創造していくべきこと

を指摘している。第3期の解放運動論としても検討すべき点と思える。