「高齢者協同組合」とは、働く意欲や意志のある高齢者がそれぞれ出資して協同組合をつくり、自分たちで仕事を起こし、自立した生活をつくり出そうというもので、仕事としてはホームヘルパーの派遣事業や給食事業、ビルのメンテナンス、リサイクル、農業などさまざまである。そして協同で働く仲間が病気で倒れたりしたときには、相互に支えあおうというものであり、仕事や生活を抱え込んだ、総合的な「福祉の協同組合」である。
本の中ではさまざまな実例が紹介されており、形として「これが高齢者協同組合です」というものはなく、中には20代、30代、40代の人も参加しているし、しいていえばいろんな人がそれぞれの思いや「こだわり」を持ちながら自己実現しようとしているのが共通項である。それぞれの経営の実情は決して順調とはいえないところもあり、課題も多いようであるが、それでもしっかりと前向きに進んでいる人びとの姿が見えてくる。
また「高齢者協同組合」の重要な取り組みのひとつとして「たまり場」づくりがある。「たまり場」とは、別に用はなくても、そこに行けば知り合いがいて、世間話ができる、そんな場所のことである。隠れた個性や技術、知恵などを外へ向かって表現するきっかけの可能性を持った、「自分探し」の場所にもなるところである。
この「それぞれが主人公」という姿勢は、第3期の部落解放運動の姿でもあり、「自分探し」「自己実現」もまたこれからの部落解放運動の重要な課題でもあるだろう。そういう意味では部落解放運動が「高齢者協同組合」から学ぶものは大きいだろうが、実はこれまでの部落解放運動自身が「高齢者協同組合」的発想で運動を展開し、成果をあげてきた取り組みもある。その部分をよりどころにして、新しい運動のシステムをつくりだしていけば部落解放の展望もよりはっきりしていくのではないか。