Home書評 > 本文
2004.08.13
書 評
 
内田 龍史

社会的に不利な立場に置かれたフリーター
- その実情と包括的支援を求めて (1)

  現在、経済のグローバル化に伴う産業構造の変化等の社会変動により、青年期から成人期への移行(トランジッション)が不安定で困難なものになりつつあることが、「フリーター」や若年失業者の増加現象から指摘されており、社会の側の対応、若者への支援の必要性が認識されつつある。

  その際無視できないのは、困難な状況に直面する若者たちの多くが不利な立場に置かれた者である点である。すでに「フリーター」が低い階層の出身者から多く析出される傾向が従来の「フリーター」研究から明らかにされており、教育達成・地位達成と出身階層の関連に関する従来の教育社会学の知見からも、低階層出身の若者たちの困難な状況が予想される。

  さらに、被差別部落出身者などマイノリティの立場に置かれた者にあっては、大人への移行における困難や日本社会の差別的な構造を強く経験していることと思われる。

  例えば、大阪府が2000年に実施した「同和地区実態把握調査」(大阪府,2001)を見ると、同和地区における男性の15-19歳の失業率は31.3%(府平均15.6%)、20-24歳においても15.0%(府平均9.9%)に達している。女性でも15-19歳の失業率は20.6%(府平均12.1%)、20-24歳では16.9%(府平均8.9%)となっており、若年失業問題は深刻である。

  このような背景を踏まえ、部落解放・人権研究所では、2003年に現在無業・フリーター状況にある若者の現状を把握するために、40名(部落27名、部落外13名)に対して聞き取り調査を行った。その成果をまとめたものが本報告書である。目次は以下の通りである。

第1章 若者労働市場の実態
第2章 高卒フリーターの「学校から職業生活への移行」
第3章 フリーターの「語り」からみた学校教育の課題
第4章 生育家族から見た若年失業者・フリーターの析出
第5章 「遊び」の世界と不平等の再生産
第6章 強い紐帯の弱さと強さ
第7章 失業・フリーター状況にみるジェンダー
第8章 若者に対する就業支援政策の現状・課題と若者のニーズ