前回に引き続き、今号では、第1章・第2章を紹介する。
本調査の前提として、第1章「若者労働市場の実態―全国・大阪・被差別部落」では、日本全体、大阪府、被差別部落のそれぞれに関して、若者労働市場に関する統計資料を概観している。
全国の若者労働市場では、若者の完全失業率は高く、とりわけ10代後半の男性の場合2002年現在では実に15.2%に達しており、非常に逼迫している。大阪府の若者労働市場では、新規学卒内定率をみると、中学生に関しては依然として統計上の数値は100%を示しているが、この場合の「求職者」数には、卒業時点で求職していた者しか含まれていないことに注意が必要である。
高校生については、1998年以降内定率が急減しており、とりわけ女性の減少が著しい。しかも、この場合の「求職者」についても定義が中学生の場合とほぼ同様であることから、実際に就職を希望していた者はさらに多かったものと考えられる。最後に、大阪府部落の就業状況について完全失業率をみると、部落出身の若者の数値が非常に高く、完全失業率の最も高かった15-19歳の若者の場合、男性で31.3%、女性で20.6%にものぼっている。
このように、概して若者の数は減少しているにもかかわらず、労働市場はさらに逼迫してきており、今後も雇用の流動化は進む可能性が高い。
第2章「高卒フリーターの『学校から職業生活への移行』」では、高卒フリーターの「学校から職業生活への移行」過程に着目し、彼/彼女たちがフリーターへといたる経緯とその要因を探求している。
彼/彼女たちは、いわゆる「進路多様校」を卒業し、現在フリーター状況にある点は共通している。その経緯として、<1>高校卒業後に進学も就職もせずフリーター、<2>高校卒業後に就職し、その後退職してフリーター、という2つのルートがみられた。
高校卒業後に進学も就職もしない「高卒無業者」は、次の三つに分類される。
- 経済的に厳しい状況におかれるなかで進学希望から就職希望へとシフトするも、就職に「失敗」してしまったパターン、
- 就職するからにはその就職先で長い間継続して勤務しなければならないという「就職」観のなかで、「就職」に対して安易に踏み込むことができず、「やりたいこと」を追求するパターン、
- 「高卒就職」制度と関わりをもたずに、自らの力とルートで就職を試みているパターン、
である。
「高卒就職」制度から就職をした層では、高校入学以前から高卒後には「進学しない」と考えていた若者や、経済的に「進学できない」という状況を受け入れていた若者が、就職に対して方向づけられていた。ただし、日本社会における就業構造の変化の中で「高卒就職」できる職種・企業は著しく限定されており、職業生活についての将来像と、学校に来る求人票での職種・企業がマッチした場合のみ、応募先について「こだわらない」決定が可能となり、まさにそのことが「高卒就職」制度での初職入職の条件として大きく影響している。
また、「高卒就職」した若者が離職しフリーターとなった理由は、職業生活の「現実」に触れ、その「現実」と折り合いをつけることができなかったことにある。そして、「次」の就職では、将来的な「安定」こそが最大の条件として語られるが、ハローワークでみる一般労働市場の求人では職業経験や資格の有無が重視され、不利な立場におかれている彼/彼女たちにとってはハードルが高く、「安定」を求めれば求めるほど就職が難しい状況におかれている。