結婚差別は、依然として生じ続けていると同時に顕在化しにくい問題でもある。部落出身者の多くが結婚の際に悩んだり、差別を受けたり、破談となったり、乗り越えたりしているにも関わらず、個人間、あるいは家族間というプライベートとされる領域で生じる問題であるからこそ、当事者でないものの介入は難しく、その内実に関する研究はほとんどなされてこなかった。
本報告書は、その内実に迫るべく2001年から2003年にかけて開催された、部落解放・人権研究所の結婚差別研究プロジェクト(結婚差別研究会)の成果である。具体的には、<1>結婚差別に関する数量的なデータ、<2>結婚差別を受けた当事者と部落出身者と部落外との結婚(通婚)の組み合わせのパターンである人々への聞き取り、<3>結婚差別に関する教材、これらをもとに、様々な側面から分析がなされている。
本報告書は3部構成となっている。
第I部「通婚と結婚差別の実態」は、数量的なデータを用い、部落出身者と部落外との結婚の割合(通婚率)の変動と、被差別体験の割合の変動を手がかりに、通婚と部落差別の現状をどのように解釈すればよいのかについて考察がなされる。
第II部「通婚カップルへの聞き取り調査から」は、インタビュー調査をもとに浮き彫りとなった、結婚差別問題の多様な現実、結婚差別を乗り越える条件、結婚後も引き続く問題点、女性という視点からみた結婚差別など、様々な課題について検討されている。
第III部「結婚差別事象を用いた学習に向けて」は、実際に結婚差別を題材にした授業実践や教材づくりなど、学校教育や啓発の可能性について、課題が整理されている。
目次は以下の通りである。
第I部 通婚と結婚差別の実態
第1章 通婚と部落差別
第II部 通婚カップルへの聞き取り調査から
第2章 結婚差別問題の多様な現実
第3章 結婚差別の乗り越え方
第4章 結婚後の安定/不安定
第5章 部落と女性
第III部 結婚差別事象を用いた学習に向けて
第6章 授業としての「同和」教育
第7章 結婚差別をめぐる相談事例と教材つくりの課題
以降、各章ごとにその概要を掲載する。