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2005.03.08
書 評
 
内田 龍史

部落解放・人権研究所 編

結婚差別の現状と啓発への示唆 (第3回)

A4判 219頁 頒価2000円

 今回は、報告書第2部「通婚カップルへの聞き取り調査から」の後半部分にあたる第4章・第5章の紹介を行う。

 第4章「結婚後の安定/不安定」では、結婚後も持ち越される部落問題をめぐる争い・交渉に焦点が当てられ、結婚差別を乗り越えた後の生活において、カップルが家族・親族との良好な関係を結ぶために必要な条件、逆に、関係が改善されない場合、何が障壁となっているのかが考察される。

 聞き取られたデータから、子どもとの関係、夫婦関係など、日常生活における争い・交渉を通じて相互理解がすすむことや、地域の解放運動や協力者の存在が下支えすることによって、安定的な関係を構築することが可能であることが示される。このような安定要因に支えられて、結婚後の生活において差別を受ける不安を伴わない家族関係を構築することが、真の意味で「結婚差別を乗り越えた」ことになるとの示唆がなされる。

 第5章「部落と女性」では、「複合差別」の視点から、その解決の可能性に焦点をあてた分析が行われている。部落外女性が結婚差別を受けたとき、「従順な良い子」をやめて親を説得できるほどの「自立した女」になるという課題、結婚に反対する親を説得するだけの部落問題の知識を身につけ、「反差別的態度」をとるという課題の二つに直面する。

 これらの課題は切り離すことができないがゆえに、こうした態度をとることは、部落差別と女性差別をともに乗り越える可能性が示唆される。また、結婚差別を乗り越えた女性が、結婚後の生活において、運動に参加する「運動家」役割と、性別役割分業を前提とする「主婦」役割との夫婦間での葛藤に悩まされる事例がある。

 これらについても、「運動家役割」を担うことにより、交渉を通じて夫の意識や地域における固定的な性別役割分業を批判的にとらえる視点が醸成され、役割分業の変革につながっていく過程が示される。一見すると個人的に見えるこのような問題について地域や社会に向けて提起していくことが、「複合差別」的状況の変革につながることが提言されている。

 次回は、第3部を紹介する。