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2005.05.16
書 評
 
中村清二

高田一宏著

明治図書、2005年4月、A5判106頁、定価1560円

本書の名前にも位置づいている「教育コミュニティ」という言葉は、1999年1月大阪府社会教育委員会議の提言「家庭・地域の教育力向上に向けて―教育コミュニティづくりのすすめ」で初めて公に使われた。そして大阪府の全ての中学校区で「地域教育協議会:すこやかネット」が組織され取り組みが始まりだしている。しかし本書が指摘するように、取り組みにはかなり濃淡が生まれている。これは大阪のことだけではなく、全国的に「地域に開かれた学校づくり」が進んでいるが、同様のことが起こっている。

 こうした現状に対し、大阪での蓄積を元に、少しでも取り組みをレベルアップしていくために出されたのが本書だと推測する。

 本書の構成は、基本的な考え方を示した部分として「教育コミュニティの創造」があり、具体的な実践を示した部分として「教育コミュニティづくりの現場」がある。具体的実践例としては、大阪府の岬町地域教育協議会、北条中学校区ふれ愛教育協議会、鳴滝地域教育推進会議、松原市域全体、そして兵庫県姫路市立朝日中学校の「トライやる・ウィーク」が紹介されている。

 基本的な考え方を示した部分にある、「学校を『地域社会の共有財産』として位置づけようという提言は、学校観の転換を迫っていると言える。…(略)…同時に、組織としての学校は『さまざまな人々が継続的に子どもにかかわるシステム』の核となる存在でもある。」(本書22頁)という指摘は、今日、最も重要な点だと痛感した。

 具体的実践例も、1町1中学校区の岬町、地域との連携の中で「荒れ」を克服した北条中学校区、被差別部落における就学前・小中連携を示した鳴滝地区、市総体としての取り組みのレベルアップをバックアップする取り組みを示した松原市、そして「トライやる・ウィーク」に取り組む朝日中学校と、バラエティに富んでいる。

 「学術書と実践マニュアルの中間あたりをねらった書である」と「まえがき」に記しているが、極めて平易な文章で書かれてあり読みやい。是非ともご一読をお勧めしたい。