第2部では、「企業評価指標研究会」での議論を踏まえて策定した「企業による人権の取り組みに関する調査」票を用い、大阪同和・人権問題企業連絡会に加盟しておられる企業の皆さんの協力の下実施したプレ調査の結果を紹介している。
第1章「人権におけるCSR調査の試みとその結果の主な特徴」では、まず調査目的と調査対象企業の概要、主な調査項目と分析の基本構成を示している。調査項目の柱は、1)企業プロフィール、2)人権問題の取り組みに関する方針、3)男女平等、4)障害者自立支援、5)部落問題、6)非正社員の均等待遇、7)企業の社会的責任と人権、8)NPO/NGOとの関係、9)情報公開、10)自由記述欄であり(但し、当該調査は二回に分けて実施しており、第二回調査では若干の項目ないし柱立ての変更を行っている)、広範多岐にわたる人権課題について各企業の取り組みを質問している。
これらの項目を、いわゆる「PDCAサイクル」(事業体における事業遂行に係る一連のステップ、すなわちPlan(取り組みの計画・方針)、Do(実施と運用)、Check(社内の人権状況の把握)、改善すべき課題の明確化と情報公開(Act)に整理し、調査結果を分析している。
ここから見出せる主な特徴としては、Planの側面では、企業倫理規定に人権尊重が項目として盛り込まれつつあること、Doについては、各人権課題、とりわけ部落問題に関して、実施体制の整備、研修の実施、研修リーダーの養成が進められていること、Checkについては就職困難者の積極雇用が進んでいること、Actでは、いずれの企業も、何らかの人権問題について改善のための課題を認識し、検討している状況が明らかになった。さらに、それぞれの項目では、各企業がその事業内容に即した先進的な取り組み(ベスト・プラクティス)を進めていることが明らかになっている。
他方で、幾つかの課題も明確になっている。とりわけ、Plan・Check・Actの側面についてその取り組みが、Doに比してやや弱いこと、特に意識調査の実施企業が多いにもかかわらず、見直しに有効に反映されているとは言い難い点は課題であろう。また、海外に事業展開している企業の数に比して、事業展開先での人権状況の把握に取り組んでいる企業が少ない。さらに、情報公開の弱さが挙げられる。特に人権尊重の取り組みに関する公開状況は弱い。
これらの結果からは、全ての課題に一斉に取り組むのではなく、重点課題を定めて、優先順位を絞りながら、全般的な取組計画を示して取り組むことが有用であると示唆している。