第2部第2章において、本調査結果が分析される。まず調査対象企業のプロフィールが挙げられる(第1節)。主たる業種については、製造業42社に対して非製造業が28社と、やや製造業に偏りがある。創業年から言えば、60年代以前に創業した企業が9割、資本規模についても5億円以上が9割を占めている。
人権問題の取り組みに関する基本的な枠組みを検討するのが、第2節である。まず、いわゆる企業倫理方針を策定する企業は8割を超えているが、その9割が人権尊重・差別禁止を明示している。また、個別の方針については、人権啓発方針(40社)、部落問題方針(27社)を策定するものが多く、社会貢献活動(14社)や従業員個人情報保護方針(10社)が続いている。但し、海外事業展開を行う企業は53社に登るが、現地での人権尊重を明文化する企業は少なく、33社が「特にない」としている。他方で、現地マイノリティの採用や、現地マイノリティの社会的課題克服への貢献など、先進的に取り組む企業が現れている点は注目すべきである。
CSRに関する国際的な基準が多数策定されているが、これらを支持する企業は決して多くはない。支持しているものとしては、ILO労働基本原則宣言が13社、GRI持続可能性報告書ガイドラインが6社、グローバルコンパクトが5社である。なお、それぞれの基準について、指示を検討する企業がそれぞれ4〜10社存在し、一層の普及は期待できよう。
CSRや人権尊重の取り組みにおいて、経営者の積極的な姿勢が社内外に示されることが重要である。しかし、人権尊重のメッセージを公開している企業は13社である。このことは、実際の取り組み状況に比して、トップのコミットメントの表明が明確ではないことを意味していると言えるであろう。CSR報告書やホームページの活用が求められる。
各人権課題の取り組みの見直しに関しては、企業倫理、部落問題、女性、障害者に関しては、約半数の企業で実施されているものの、非正社員や海外事業展開先での人権状況については、その比率がそれぞれ21%、16%と低く、課題によって偏りがあることが分かる。
第3節では、男女平等に関する取り組みについて述べている。採用段階の取り組みとして、機会の均等を公表している企業は約3割であり、また新卒採用において、一昨年の採用数の増減比率が男女間で90%であった企業が38社であり、半数ほどの企業で均等が前向きに進んでいることが伺えるが、実数で大きな較差がある企業も含まれる点は、注意を要する。
女性正社員の定着を図るための取り組みとしては、男女平等に関する社内研修が半数以上の企業が役員研修に取り組み、新入社員研修はほぼ8割が実施している。ポジティブ・アクションの実施については、約半数が「特にない」としているが、12社が積極的登用計画を策定している。「次世代育成支援計画の策定状況」、「法定以上の育児休業制度導入」については、それぞれ24社、33社であった。セクハラ相談窓口の設置状況は極めて積極的であり、68社であった。
男女の登用実績については、雇用管理基本調査結果を下回る企業が職階によって6割〜7割を占めており、あまり芳しいとはいえないであろう。