前回の紹介では、第2部第2章第3節までを紹介した。第4節は、障害者自立支援に関する取り組みである。障害者雇用については、すでに障害者雇用促進法に基づいて、一定の割合で障害のある人を雇い入れる義務が、企業について定められている。このような義務を履行し、積極的に障害のある人を雇用する意思を公表している企業は、調査対象企業の4割であり、男女平等に比してやや多くなっている。障害者雇用率の達成については、約半数の企業が未達成であえるものの、達成企業の中には、2.50%を超える企業が4社存在し、障害者雇用が一定取り組まれていることがわかる。平均勤続年数から見ると、一般の従業員との比率は、有効回答のうち4分の3の企業が、80%以上としており、一般従業員と遜色ないと評価できよう。雇入れ計画については、雇用率達成企業も含めて、約半数の企業が「作成している」と回答している。
障害者問題に関する社内研修の実施状況は、階層別・新入社員・職場単位研修で50ないし60%の比率をしめしている。ただし、役員研修は4割に満たない状況がある。職場定着や、就業機会拡大についても、さまざまな取り組みが展開されている。ただし、職場環境のユニバーサル・デザイン化を推進している企業は16社と決して多くはない。今後社内施設の新設・改築の際には、この点を踏まえて進めることを期待したい。
障害者支援のための社内体制を整備しているのは7社と少ないが、担当者を選任する企業が24社であり、その最上位職階は部長相当職ないし役員となっている点は、評価できよう。
部落問題(第5節)についていえば、企業と部落問題のかかわりからすれば、まず公正な採用選考を行うことが極めて重要であるが、その意思を公表しているのは20社にとどまっている。他方、就職困難者の積極採用については、同和地区出身者について7割、在日韓国朝鮮人について3割と、部落問題について突出している。具体的な内容としては、「おおさか人材雇用開発人権センター」に会員として加入し、就職困難者の就労の実現に貢献している。
部落問題に関する社内研修は、他の人権課題に比して、かなり積極的に取り組まれている。階層別研修、役員研修、職場単位研修は約8割の企業が実施しており、新入社員研修にいたっては9割を超えているのである。また、人権研修のリーダー要請にも積極的に取り組んでいる企業は45社に登り、社内意識調査を実施する企業も、40社と半数を超えている。社内体制の整備に関して言えば、全社体制の整備(67社)、担当者選任(68社)、最上位職階(役員46社、管理職21社)と、大変積極的である。このように見ると、実際に取り組まれている内容が、社外への広報に必ずしも適切に反映されていない点が、難点であるといえるのではないか。
これまでは、雇用において不利益を受ける人々のカテゴリーに焦点を当ててきたが、他方で、昨今職場の人権を考えるに当たって、非正規雇用の問題は避けて通ることができない。雇用形態の多様化の下で、にわかにその比率が高まり、格差拡大の要因のひとつとなっている。そこで本調査では、特に非正規雇用の実態について一章を設けることとした。まず労働条件の均等の状況でいえば、安全衛生への説明・訓練については9割近くの企業で均等が達成されているが、通勤手当が8割、福利厚生施設の利用が6割、慶弔休暇は半数以下と、格差が設けられている。また、正社員と責任・職務内容が同一な非正社員の処遇については、夏季・年末年始休暇について半数以上の企業が均衡を図ってはいるものの、賃金、一時金、退職金に関しては大変厳しい実態がある。他方、非正社員のキャリア形成(28社)や、処遇向上(29社)、正社員への雇用形態転換(33社)について、一定の仕組みを作る企業が存在するが、優先応募の機会提供については、ややハードルが高い(12社)。転換の実績については、少数ながらも、頻繁に活用されている企業が存在する(過去三年で100件以上が4社)。
(文責:李 嘉永)