関・前市長のもと2006年2月に公表された「市政改革マニュフェスト」、そして2008年6月の橋下・大阪府知事の「大阪維新プログラム」と、地方財政危機に対するトップの処方箋が示されてきている。これは大阪府・市だけに留まる問題ではなく、全国の自治体にも少なからず影響をもたらすものである。なぜなら、地方財政危機の問題は全ての自治体にとって避けられない問題だからである。
これに対し澤井勝(奈良女子大学名誉教授)さんは、上記の論文の中で以下のような点を指摘し今後の方向性を提起している。
第1に、現状では2007年に成立した「地方自治体の財政健全化法」も加わり、2011年の「プライマリーバランスの黒字化」にむけて財政支出の減少傾向がなお続くこと、第2に、地方財政危機を生み出した基本要因である国の責任(国の施策の失敗につき合わされたこと、分権化に伴う自治体の事務事業増加にもかかわらず交付税の大幅削減と不十分な財源移譲、所得税率の累進性からフラット化による所得格差の拡大など)と自治体自体の責任(ハコ物建設の放漫財政や人件費の膨張)、そして第3に、財政破綻への道を避けつつ限られた税財源を有効に使うには、1.財政過程(施策の企画・予算編成や執行段階・決算過程の施策評価から次の施策への展開・他団体との比較分析)の情報公開と市民参加、2.市民との協働による公共サービスの再構築、3.公務労働の再構築、4.その裏図付けともなる「市民自治基本条例」制定が必要なこと、第4に、こうしたことによる「チープガバメント」ではなく「グッドガバメント」の実現こそが財政改革の目的であること、等である。また、星野英一『民法のすすめ』(岩波新書)を引きながらの、自治体が前提とする人間像-形式的平等から実質的平等と自由へ-も、格差社会と自治体を考える上で興味深かった。
国の責任に関しては、「2008年4月15日 参議院総務委員会公述人意見」で、地方交付税改正案、地方税法改正案等の検討が示されているので参照されたい。
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