本書冒頭の「序章 逆風のなかの公立学校」にみられるように、競争と自己責任を基礎とした新自由主義と、狭隘なナショナリズムを基礎とした新保守主義が公立学校に大きな波として押し寄せている。イギリスから約10数年遅れの波として。
これに対し本書は、公立学校の良さ=「地域性」「多様性」「平等性」を大切にしながら、子ども達だけでなく教員や地域住民も試行錯誤しながらではあるが元気あふれた学校づくりに邁進している小学校(4校)、中学校(6校)、高校(2校)を紹介している。全て志水さんが何らかの形で関わってきた学校で、大半は同和教育の実践の中で形づくられてきた学校である。もちろん、それは「学力はどうでもいい」というわけではない。欧米でのマイノリティの子ども達も含めた学力(「点数学力」)達成を実現している「効果のある学校」に留まらず、「エンパワー」を基礎とした「より広範にわたる教育活動の成果」を追及する「力のある学校」をめざしている学校なのである。
具体的には目次にあるように、金川小学校(福岡県)―教育コミュニティづくり、布忍小学校(大阪府)―教師が育つ、細河小学校(大阪府)―「鍛える」学校文化、東部小学校(静岡県)―ちがいを力に、大庄北中学校(兵庫県)―現場の底力、聖籠中学校(新潟県)―志のある学校、寝屋川第四中学校(大阪府)―効果のある学校、豊川中学校(大阪府)―「みんな」でつくる、野市中学校(高知県)―子どもが育つ、松原第三中学校(大阪府)―伝統と革新、長吉高校(大阪府)―多文化共生の学校づくり、松原高校(大阪府)―ともに学び、ともに育つ、である。
そして、これらの学校に共通した要素(強弱はあるが)として、以下のような「力のある学校」の8つの要素を指摘している。