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産業・農業部会・学習会報告
2001年1月12日

現代中小企業と部落の産業

(報告)田中 充(関西大学教授)

 一昨年の12月に新中小企業基本法が制定されたが、これは改悪で、強い者(大企業)が弱い者(中小企業)を淘汰するのではなくて、利用する時代にはいってきた。今後はIT関連などのベンチャー企業だけを育成するようになってくるように思われる。しかし、産業政策としては、強い者を規制して弱い者を支援し、同じ土俵で競争させるというものでなければならない。その意味で、産業経済と人権問題を柱として考えていくことが、共生社会実現の課題である。

 戦後の部落の産業の問題は、いわゆる「二重構造」問題から始まっている。「二重構造」は視点を変えれば、大企業の下請け系列支配の構造である。部落の産業がその最末端におかれ、社会的差別と偏見をうけるという問題は、日本の資本主義発展の特殊性から生じてくる問題である。だから部落の産業は、一般的な中小企業としての問題性をもちながらも、その社会的なあり方において被差別性があらわれてくる。

 国際化や情報化といった時代の変化、部落の産業の実態の変化というものはよく観察する必要がある。大企業の下請け系列支配は、固定したグループ別の支配から、流動的な全体的支配に移行しつつある。また、部落の産業は、高度成長期やバブル期を経て、土木建設業や不動産業が増加したが、製造業ではなめし革・革靴製造業の比率が高く、卸・小売業では食肉業、またサービス業では廃棄物処理業の比率が高い。確かに変化は生じているのだが、本質的な構造や実態に変化が生じているとはまだいえない。

 部落の産業は、地場産業の振興という観点からその改革を進めていく必要がある。しかし、今日では中小企業白書でも地場産業の調査はとりあげなくなった。「地域産業」という言葉で、既存の伝統的な地場産業の問題をあいまいにしている。とはいえ、今後は同和対策という枠にしばられることなく、産業政策、中小企業政策のなかで具体的に位置づけてその発展を考えていかなければならない。その場合に、部落の産業は人材育成や情報化投資が著しく立ち後れていて、その面での施策的支援も弱いという点を見ておく必要がある。(越智昭博)