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部会・研究会活動 <反差別部会>
 
反差別部会・学習会報告
2000年8月26日
民衆の差別意識と変革の論理を考える

森首相「神の国」発言に関して
(報告)黒田伊彦(関西大学講師)

大阪府知事太田房江「浮浪者」発言に関して
(報告)本田哲郎(釜ヶ崎反失業連絡会)

東京都知事石原慎太郎「三国人」発言に関して
(報告)田中ひろみ(戦後補償と統一を支援する会)

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【3人の発言の性格と共通性について】

1.5月15日の「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国であるということを国民のみなさんにしっかりと承知をしていただく」という森首相の発言は、現在の国家を戦前の現人神たる天皇主権国家ととらえる憲法違反であり、天皇神格化の国家神道を国民に強制する信教の自由、政教分離の憲法に違反し、日本の文化、伝統の尊重を取り入れた教育基本法改正の策動と連動したものである。

2.6月9日、大阪府太田知事は心斎橋筋の視察後の商店主側の「夜になると野宿者がシャッターの前で布団を敷いて寝ている」との発言に対し「まちづくりの基本は安全。浮浪者の方や外国人が増えている中で、快適な町をつくる大事さを教えてもらった」と答えた。「表現不適切」と釈明したが、平均年齢55才、仕事がなく野宿を余儀なくされている状況改善への施策の責任を自覚せず、野宿者、外国人を犯罪者扱いで治安対策の対象としてみる本音が現れている。府の人権条例にも違反し、石原東京都知事の「三国人」発言に通じるものである。

3.石原東京都知事の4月9日の「不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな災害では騒擾事件すら想定される」と発言。9月3日に自衛隊による治安出動訓練を防災演習の名をかりて要請した。

【民衆の差別発言の受容と人種差別撤廃条約による告発の必要性】

 これらの発言で辞任に追い込まれないのは、民衆に差別を受容する素地があるからである。

 その意識改革には韓国の「恨」や沖縄の「肝苦さ」のように歴史的体験が継承され、想像力で知識や記憶が感性として身体化されることが必要で、そのためには「語り」と共に生活課題で取組む人間関係の中で偏見が除かれていく必要性が多くの事例で討論された。またこれらの発言は人種差別撤廃条約第4条のa「差別の扇動、宣言の禁止」に反しており、2001年1月に予定されている国連の人種差別撤廃委員会での日本政府報告の審議に際し、カウンターレポートを提出すると共に、表現の自由の憲法21条に抵触するとして4条のaの批准を留保している日本政府への追及も課題である。(黒田伊彦)