1 ナショナリズムの3段階と国家主義
今、ナショナリズムが大きくのし上がっているが、世界史的に考えたらナショナリズムは3つの段階を踏んできている。(国民主義・国家主義・民族主義)
その中で日本の国家主義は次の3つの特色を持っている。
- 国家有機体説(家父長制的国家論・天皇を神格化)
- 単一民族説の虚説(同化と排外が同時的に進行していく)
- 侵略戦争を支えるジェンダー(生めよ殖やせよ・戦死を名誉とする)
今、「強い日本をつくる」が民主党のスローガンになったように、治安を名目とした権力強化に批判の声が起こってこない現状がある。
2 1930年代と現在
- 中国における抗日戦争の激化(1934年長征・1936年西安事件)と、イラク民衆の抵抗と世界の反戦運動の高まり
- 国体明徴運動・国民精神総動員運動(1937年)と「日の丸・君が代」の強制(1999年)・「神の国発言」(2000年)
- 国家総動員体制(1938年)と有事法制・私権制限(2003年)・自衛隊海外派兵(2004年)
- 隣組制度(1940年)と住基ネット・監視カメラ・自警団の組織化
- ベルリンオリンピックのナショナリズムとW杯のプチナショナリズム
- 吉川英治の宮本武蔵(1935-39年)とNHKドラマ
このように、1930年代と現在には多くの類似点がある。失業と不安、ニヒリズムから、モラルと共同体意識の再建を名目とした天皇制ファシズムと戦争へ流されていっている現状もよく似ている。
3 イラク派兵と戦死への備え
1964年に生存者の叙位叙勲が復活し、1993年にカンボジアPKO活動で死亡した文民警察官高田は死没者叙勲制度に従って叙勲された。2003年11月には警察官・自衛官などを対象に危険業務従事者叙勲制度が創設された。イラク派兵を前に防衛庁は任務中に死亡するなどした隊員に支給する弔慰金を1億円に引き上げ、任務の危険性に伴う手当も1日3万円に増額した。また、防衛庁敷地内に自衛隊殉職者を追悼する慰霊の場も整備された。
このような戦死への備えを支えるためにNHKの長期大河ドラマが「武蔵」から「新撰組」に変った事は象徴的なことである。1人で戦う、信念の己を信じる求道の宮本武蔵の武士道から、志願する組織としての「至誠」・武士よりも武士らしく生きる―の実践をする若者への共感をかもし出し、イラク派兵の自衛隊員を「期待される日本人像」としていく世論操作として機能している。
権力を支える民衆の自発性を組織する「共治」の思想が働いている。
4 1930年代と現在を映像資料を用いて報告し研究協議を行う
提起されたテーマの例