調査研究

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2005.06.17
部会・研究会活動 <反差別部会>
 
反差別部会・学習会報告
2005年2月12日
日本軍性奴隷をめぐる問題状況について」

報告:田中 ひろみ(ハナの会)

(1)日韓条約に関する公文書問題

 1月17日に韓国で日韓条約関連の外交文書を公開されたことで、日本軍慰安婦の問題が、日韓条約に含まれなかったことが立証され、日本政府の「個人賠償請求権が日韓条約によって消滅した」という主張がくつがえされた。

 日本で拉致問題ばかりを過大にとりあげ朝鮮民主主義人民共和国への敵意をあおり、制裁を云々して戦争できる体制づくりを急いでいることの反作用が、日本軍国主義の被害を受けた国々に現れ始めたと言えるのではないか。日本の戦後補償を実現させようとする運動はけっして孤立していないと感じられる。

(2)NHKの女性国際戦犯法廷の番組改ざん問題

 女性国際戦犯法廷は、1998年4月にソウルで開かれた第5回アジア連帯会議で、2000年12月に東京で開催されることが決まり、2年間の準備を経て開催された。開催までに4巻の「日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録」が出版された。

第1巻.戦犯裁判と性暴力
第2巻.加害の精神構造と戦後責任
第3巻.「慰安婦」・戦時性暴力の実態I―日本・台湾・朝鮮編
第4巻.「慰安婦」・戦時性暴力の実態II―中国・東南アジア・太平洋編

 この4巻は、それまでの日本軍性奴隷制問題研究の集大成で、3巻4巻では、各地の証拠写真や証言、資料など、「なかった」とする主張を完璧に論破する内容を満載している。

 法廷開催のあと、第5巻「女性国際戦犯法廷の全記録I」と、第6巻「女性国際戦犯法廷の全記録II」を出版した。

 NHKはこの法廷の模様をVAWW-NETの協力でその準備段階から取材し、1月に放送したが、その際にひどい番組改編を行った。その時政治家の介入があったことを長井さんが内部告発して、今問題になっている。

(3)国民基金問題

 「国民基金」は、日本軍性奴隷制の問題を、上辺だけ解決するかのように見せかけるためのもの。この問題の基本は、ハルモニが被害をうけたことであり、その解決は、資料を公開して真相を究明し、加害の事実を認めて責任者を処罰し、謝罪と補償や教育等の施策を進めることではかられる。

 国民基金は、それを、「ハルモニが気の毒だ」ということにすりかえてしまった。ハルモニが気の毒だというのは問題の本質ではない。国民基金は、日本国民に対して「私たちがひどい罪悪を行った」という事実認識を持たせるのをさけて、「かわいそうだからカンパしましょう」という安易な方向へ導いた。その結果、たくさんのカンパは集めても、教科書の記述から消し去ろうとしていることに何の批判もおきていない日本の現状がある。

 国民基金の運動団体が、解決されていない一切の責任は日本政府にあるにもかかわらず、ハルモニが国民基金をうけとらないことが原因であるかのような印象をあたえようとしているのは許せない。

(文責:田中 ひろみ)