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法律・狭山部会・学習会報告
2002年5月24日
国際人権条約と国内判例
〜 外国人登録法関係を主に

(報告) 武村 二三夫(弁護士)

武村二三夫・弁護士より「国際人権条約と国内判例 〜 外国人登録法関係を主に」について報告がされた。分析の対象事例は約30事件40判決におよぶ。以下にその概要を紹介する。

1985年前後以降、指紋押捺拒否に対する外国人登録法違反の逮捕、そして入管による在留期間更新の拒否や再入国拒否、警察による外国人登録証の常時携帯のチェックに対して、さらには在留期間更新自体の不当性などを繰り返し提訴してきた。

この時、自由権規約第26条(法の前の平等・差別の禁止)や第7条(非人道的もしくは品位を傷つける取扱いの禁止)を根拠に外国人登録法の違法性を主張したが、司法は憲法第13・14条に違反しないとして国際人権規約の独自性を検討しなかった。

  自由権規約第12条(移動および居住ならびに出国の自由)4項(自国に戻る権利)も、「自国には定住国も含む」という芹田健太郎・神戸大学の意見書を無視し「国籍国」のみと判断するというものであった。こうした中で、1994年10月28日の大阪高裁判決(H4(ネ)1290号)では、規約人権委員会の一般的意見や欧州人権条約とそれに関する判例を自由権規約の解釈の補足的手段とできる、と判断したことや、1996年6月28日の大阪高裁判決(H5(ネ)304号)が規約人権委員会の一般的意見「合理的かつ客観的で合法的な目的を達成する目的で行われた」と認められない限り自由権規約に違反するという基準を採用する、など少し変化してきている動きは見られる。

  ただ、結論は原告の主張を認めないというもので、さらに最高裁はほとんど国際人権規約に対する判断をしないという傾向である。