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法律・狭山部会・学習会報告
1999年9月17日
ネットワーク時代における労働者の個人情報保護
―労働省の「労働者の個人情報保護に関する研究会報告書」をめぐって―

(報告)竹地 潔(宮崎大学)

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 竹地 潔さんより以下の概要の報告がなされた(『季刊労働法』187号、1998年12月を参照)。

 企業は消費者情報以上に「労働者」の個人情報を大量に処理しているが、コンピュータやそのネットワークの急速な発展に伴う、情報収集方法、情報処理システムの高度化により紛争事例が多発化している。遺伝子情報の問題も今後、大きな問題となるであろう。

 日本の場合、欧州連合(EU)の個人情報保護指令(1995年採択、98年発効)の第25条―個人情報保護の水準が十分ではない国への個人情報の移転禁止規定―と労働分野における国際基準である国際労働機関(ILO)の「労働者の個人情報保護に関する行動準則」(1996年)もあり、1998年6月、労働省の「労働者の個人情報保護に関する研究会」報告書を出し、将来的に法的措置をも視野に入れた検討の必要を示した。

 そのために1997年には企業における労働者の個人情報管理実態調査も実施され、

  • 幅広い分野の個人情報が収集、管理されているが本人の事前同意の得る割合は極めて少ないこと
  • 身体検査、心理テスト、適性検査は6〜7割の企業で実施され、労働者の同意を得る割合は労使で乖離があること(企業調査で約7割、労働者調査では約3割)
  • 個人情報に係る平均電算化率は約4割、
  • 企業外部に労働者の個人情報を伝達する場合、労働者本人の同意を得る企業は少数と推測されること(企業調査で52.3%、労働者調査では0.4%)、
  • 個人情報保護のための情報管理規定を定めている企業は約3割だが、収集目的外利用の禁止を定めている割合は半数未満、
  • 閲覧請求権を認めている企業は、全ての情報を認めている割合は僅少(企業調査約2割、労働者調査1割未満)であり、全部または一部の情報を認めている割合は企業調査で約7割、労働者調査で約3割であること、

等が明らかになった。

 研究会報告では、部落問題に関しても、いわゆる「センシティブ(特に機微な)情報」として基本的に個人情報の収集・利用が国際的には禁止されているとし、大阪の身元調査禁止条例にも言及している。

 今後の展望としては、EUとアメリカが個人情報保護をめぐってどういう合意を作るのかや、大蔵・通産・郵政省が金融・通信などの特定分野での個人情報保護法をどうしていくのか、等々により紆余曲折が予想されるが、国際基準をふまえた取組みがいずれにしても迫られることは必至である。

(中村清二)