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法律・狭山部会・学習会報告
1997年4月23日
アメリカ雇用機会平等委員会ならびにカナダ人権委員会の機能と権限

桑原昌宏(愛知学院大学)

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はじめに

 去る4月23日、桑原昌宏先生(愛知学院大学)より「アメリカ雇用機会平等委員会ならびにカナダ人権委員会の機能と権限」について、実際の訴訟状況も含めて報告がなされた(詳細は『季刊労働法』178号の「均等法改正、カナダとアメリカからの示唆」を参照されたい)。以下、その概要を紹介する。


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強制的調査権を持つ委員会

 雇用分野については、日本、カナダ、アメリカとも、基本的には当事者間の労使紛争と位置づけ、刑事制裁の対象としていない。従って当事者間で解決する手続きを優先している、という点は共通している。

 しかし、大きな違いとして、アメリカは雇用平等委員会が差別をする事業者に対して訴訟を提起する権限をもった上での調査、斡旋であり、カナダの人権委員会は行政救済命令の権限をもち、共に強制的な調査権限をもっている。これに対し、日本の男女雇用機会均等法は実効性の極めて弱い調停委員会制度の下での労働省による行政指導型であることがまず指摘された。


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アメリカの雇用平等委員会のしくみ

 続いて、具体的な判例をもとにアメリカの雇用機会平等委員会の紹介がされた。

 まず、全体像として、連邦雇用機会平等委員会の年次報告書(1990年版)によれば、申立件数は6万2405件(この内人種差別46.7%、性差別28.5%、年齢差別23.6%)、BNA出版の1995年版全米雇用差別事件判例集第66巻によれば裁判となった事件は280件(この内、性差別41%、年齢差別20%、人種差別17%)である。

 雇用機会平等委員会は申立を受理すると、広い対象に対し強力な調査権限をもって調査を行う。事業者は委員会の調査が「単に負担をかける」というだけでは拒否できず、「事業の正常な運営を阻害する恐れがあること」を立証しなければならないことが判例上支持されている(調査令状に事業者が従わない場合は、委員会が裁判所に令状の執行命令を求めて訴訟をできる)。

 この調査結果を報告書としてまとめるが、この時点で委員会は既に差別の存在を強く推認しているといわれる。

 これに続いて、委員会は紛争調整官を任命し斡旋を行う。この調整が尽くされたかどうかは、以下のような基準により判断される。

 「委員会が紛争調整をする法律上の義務を有していることを前提に、事業者に対し、違反があると推定されている行為を是正するには、どういうことをすべきかの目標を書面で事業者に示すこと、それに従わない場合には、課せられるであろう措置を示すこと、そして紛争調整による解決の利益を伝えること」である。

 そして、基本的には自主的解決を原則とするので、この段階で解決をめざすが、解決しなかった場合、委員会が原告となるか、もしくは申立人が原告となって訴訟を起こす。1995年の場合、裁判となった280件の内、委員会が原告または被告になった事件は11件である。

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その他

 さらには、裁判所での法的救済(一般的損害賠償と制裁的損害賠償)やカナダ人権委員会の特徴である行政救済命令としての雇用命令、賃金格差支払命令、復職命令、謝罪命令、改善命令などが紹介された。そして、活発な質疑が行われた。

(文責:事務局)