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法律・狭山部会・学習会報告
1997年2月19日
部落差別事象の救済に関する法律(案)(第2次案)

桜井健雄(弁護士)

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前回に出された意見をふまえて引き続き桜井健雄・弁護士より、国内の人権侵害救済に関する法律(試案)としての「部落差別事象の救済に関する法律」(案)が提起された。

前回の第1次(案)と違う点について、第1に、「差別事象」の定義を以下のようにしたこと、

第12条(差別事象)

この法律で言う差別事象とは、本人又はその親族が同和地区に居住していること並びに居住していたことを理由としてなされる下記事項を言う。

1.結婚において不当な取扱いをすること

1.就職において不当な取扱いをすること

1.雇用条件昇進等で不当な取扱いをすること

1.取引(不動産の賃貸借等も含む)において不当な取扱いをすること

1.身元調査を依頼又は引き受けること及びその結果を伝達すること

1.同和地区住民又は同和地域を侮辱する行為をなすこと

1.その他前記各号に相当する行為をなすこと

第2に、「申立権者」を以下のように個人と団体としたこと、

第13条(申立権者)

人権救済委員会に申立をできる者は次のとおりとする。

1.差別事象を受けた個人又は当該個人の四親等内の親族

1.差別事象の解消をめざす団体で、人権救済委員会が審査のうえ政令で定める基準を満たし、団体としての自立機能を有すると認めたもの。

但し、いずれの場合も差別事象を受けた当事者(個人、団体)の明示の意思に反しては申立を行えない。

第3に、「相手方」を差別落書のように、不明な場合も想定し、以下のようにしたこと、

第14条(相手方)

申立権者が人権救済委員会に対して申立を行う相手方は差別事象を行ったとされる個人及び団体とする。

尚、相手方が不明又は不詳であった場合、申立を受けた人権救済委員会は、その調査のため関係地方自治体に協力を求めることができる。

第4に、「人権救済委員会の命令」を以下のようにしたこと、

人権救済委員会は、第1項の審問の手続を終わった時は、事実の認定をし、この認定に基づいて差別事象の存否を判断し、その結果に基づき、相手方より申立人へ謝罪文の交付、差別事象を記載した文書の回収及び発行の差し止め、差別事象が継続されている場合はその中止を命じることができる。

この事実の認定及び命令は書面によるものとし、その写しを相手方及び申立人に交付しなければならない。この命令は、交付の日から効力を生ずる、等が報告された。


-----------------------------------------------------------------------------これに関して、活発な意見交換がなされたが、主な意見は、

  1. 部落出身者でない者への差別行為の場合、「差別事象」の定義でいう「同和地区に居住していること並びに居住していたことを理由としてなされる」に該当しないのでは、

  2. 罰金額をもっと高くできないのか、

  3. 人権救済委員会の命令の中に現行の労働委員会でもとられている“原状回復措置”は必要だし、その強制執行ができるような規定がいるのではないか、

  4. 法律全体の構成として、「第12条差別事象」はもっと冒頭にもってきて人権侵害への救済という性格を前に出し、格調の高さも加味した構成にしたらいいのでは、

  5. 第12条の差別事象の第1〜4項と第5、6項とでは少し表現に不統一があるのでは、

といった内容であった。

これらの意見を参考にしつつ、最終的には桜井健雄・弁護士が案をまとめていくことが確認された。