調査研究

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2007.11.29
部会・研究会活動 <法律・狭山部会>
 
法律・狭山部会・学習会報告
2007年9月30日

1.部落解放同盟大阪府連合会支部事務所
使用不許可処分取消訴訟について

小野順子(弁護士)

2.葬儀社反対運動事件について

大川一夫(弁護士)

〈第1報告〉

 現在、大阪市内部落解放同盟12支部のうち、4支部が、人権文化センター内に事務所を構えている。この事務所は、従前、行政法上の行政財産の目的外使用の許可を得ていたのであるが、2007年3月に各支部が使用許可申請をしたところ、大阪市は不許可の処分を行った。これは2006年の「大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」の提言において、人権文化センター内の解放同盟支部については、外部に移転すべきとの意見が示されたことを受けたものである。これに対して4支部は、かかる処分の効力を争って、そのまま事務所を運営しており、かつ家賃については供託を続けている。

 使用許可申請に至る経緯について言えば、地方自治法上、公有財産には行政財産と普通財産とがあり、行政財産とは普通公共団体において公用または公共用に供し、または供することと決定した財産であり(238条4項)、「その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」としている。人権文化センターに関しては、条例に基づく行政財産と位置づけられている。今回争われている人権文化センターは、その前身である解放会館、さらには隣保館が設置された当初から、支部の要求により設置され、かつ解放会館条例上もその事業として「地区住民の自主的、組織的活動の促進に関すること」があげられていたことから、当然のごとく支部事務所が入り、部落解放運動の拠点として使用されてきた経緯がある。その後、法期限を前にして、2000年に人権文化センター条例が制定され、条例上その事業に従前と同様に「地域住民の自立支援及び自主的活動の促進に関すること」が掲げられていた。これに沿って、同年の大阪府連との交渉の結果、「行政財産の目的外使用許可」という利用形態をとることで合意したのである。その際、市当局は「形式的に一年毎の申請・許可という形にしたい」との意向が示されたものの、解放同盟側は、それはあくまで形式的なものであり、使用のありかたは従前どおりである」旨念押ししていた。しかしながら今般の調査・監理委員会の提言にもあるとおり、かかる目的外使用許可はあくまで「暫定的」なものとしており、認識が食い違っているのである。

 解放同盟側の主張としては、人権文化センターはそもそも部落解放運動の成果として設置され、部落解放を第一の目的としているのであるが、市は「広く一般の利用に供する市民利用施設という性格」を不許可の理由としており、人権文化センター条例の目的とずれているとしている。また、解放同盟支部が人権文化センターにあるということは、条例が定める「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上を図る必要がある地域住民の福祉向上」、「市民に対する人権啓発」「市民交流の促進」という目的のために必要不可欠であること、そもそも調査・監理委員会は市長の私的諮問機関であり、この提言を根拠に不許可処分をするのは誤りであること、さらには交渉の経緯からしても、今日になって使用許可を「暫定的」と変質させることはおかしいことから、かかる不許可処分は違法・無効であると主張している。

 これに対して大阪市は2007年8月、明け渡しを求める訴訟を提起しており、実質的に併合されて審議が進められている。

 なお、論議においては、人文センター条例上、地域住民の自主的活動がその事業として位置づけられているのであるから、そもそも目的に合致する使用形態であり、「目的外使用」というスキーム自体がおかしいのではないか、したがってそもそも今般の不許可処分は条例の趣旨目的に違背するのであるから、条例違反ではないのか、との意見があった。

〈第2報告〉

 この事案は、大阪府内において、セレモニー業(葬儀社)を営む原告が、廃業した遊興施設(パチンコ店)を2005年3月に買い取り、用途変更や営業許可の届出などを済ませ、改装工事を着工しようとし、同年10月に地元町会長に挨拶を行った。その際町会長の要望を受けて、説明会を開催することとなった。しかし当日指定の場所に行くと2-30人ほどの住民がおり、「汚い」「教育上悪い」「隔離せよ」「塀をはれ」などと要求し、原告役員が汚いものではないと説明したが、平行線に終わった。

 同月17日に、町会は要望書を提出して、水回り、ごみ処理、証明、安全確保といった要求に加えて、一時金1000万円、葬儀一件につき1万円を支払うよう要求した。原告としては、地元との紛争を避けるためにも協力する姿勢を見せ、水回りその他の要求には応じたものの、金銭的要求は拒否した。しかし町会長は「あくまで1000万円」と金銭的要求を撤回せず、拒否するのであれば「仕事できんようにしてやる」として、国道沿いに「葬儀社進出絶対反対」などの看板・ノボリを立てた。そこで、看板ノボリの撤去と損害賠償を求めて、町会及び町会長を提訴するにいたったのである。

 町会側の金銭要求に対しては、当初「地価減少の保証」と主張していたものの、原告側が「百歩譲って地価減少があったとしてもなぜに町会が請求権を持つのか」と反論したところ、町会側は金銭的要求を撤回した。

 その結果現在の争点は嫌忌施設に対する反対運動の適否であるが、葬儀施設は、従前のパチンコ店に比して、騒音・照明の点から見れば、物理的環境はよくなるはずである。そうなると反対する理由は「葬儀社はいやだ」とする職業に対する差別のみであり、このような職業差別は法的保護に値しないと主張している。これに対して町会側は職業差別ではなく、いかなる職業に対しても町会として要望を述べ、容れられなければ反対運動をするのは当然であり、これは表現の自由であるとしている。なお、裁判所からは、強く和解を促されているところである。

(文責:李嘉永)