〈第1報告〉
現在、大阪市内部落解放同盟12支部のうち、4支部が、人権文化センター内に事務所を構えている。この事務所は、従前、行政法上の行政財産の目的外使用の許可を得ていたのであるが、2007年3月に各支部が使用許可申請をしたところ、大阪市は不許可の処分を行った。これは2006年の「大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」の提言において、人権文化センター内の解放同盟支部については、外部に移転すべきとの意見が示されたことを受けたものである。これに対して4支部は、かかる処分の効力を争って、そのまま事務所を運営しており、かつ家賃については供託を続けている。
使用許可申請に至る経緯について言えば、地方自治法上、公有財産には行政財産と普通財産とがあり、行政財産とは普通公共団体において公用または公共用に供し、または供することと決定した財産であり(238条4項)、「その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」としている。人権文化センターに関しては、条例に基づく行政財産と位置づけられている。今回争われている人権文化センターは、その前身である解放会館、さらには隣保館が設置された当初から、支部の要求により設置され、かつ解放会館条例上もその事業として「地区住民の自主的、組織的活動の促進に関すること」があげられていたことから、当然のごとく支部事務所が入り、部落解放運動の拠点として使用されてきた経緯がある。その後、法期限を前にして、2000年に人権文化センター条例が制定され、条例上その事業に従前と同様に「地域住民の自立支援及び自主的活動の促進に関すること」が掲げられていた。これに沿って、同年の大阪府連との交渉の結果、「行政財産の目的外使用許可」という利用形態をとることで合意したのである。その際、市当局は「形式的に一年毎の申請・許可という形にしたい」との意向が示されたものの、解放同盟側は、それはあくまで形式的なものであり、使用のありかたは従前どおりである」旨念押ししていた。しかしながら今般の調査・監理委員会の提言にもあるとおり、かかる目的外使用許可はあくまで「暫定的」なものとしており、認識が食い違っているのである。
解放同盟側の主張としては、人権文化センターはそもそも部落解放運動の成果として設置され、部落解放を第一の目的としているのであるが、市は「広く一般の利用に供する市民利用施設という性格」を不許可の理由としており、人権文化センター条例の目的とずれているとしている。また、解放同盟支部が人権文化センターにあるということは、条例が定める「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上を図る必要がある地域住民の福祉向上」、「市民に対する人権啓発」「市民交流の促進」という目的のために必要不可欠であること、そもそも調査・監理委員会は市長の私的諮問機関であり、この提言を根拠に不許可処分をするのは誤りであること、さらには交渉の経緯からしても、今日になって使用許可を「暫定的」と変質させることはおかしいことから、かかる不許可処分は違法・無効であると主張している。
これに対して大阪市は2007年8月、明け渡しを求める訴訟を提起しており、実質的に併合されて審議が進められている。
なお、論議においては、人文センター条例上、地域住民の自主的活動がその事業として位置づけられているのであるから、そもそも目的に合致する使用形態であり、「目的外使用」というスキーム自体がおかしいのではないか、したがってそもそも今般の不許可処分は条例の趣旨目的に違背するのであるから、条例違反ではないのか、との意見があった。
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