1.「高槻むくげの会」について
1967年、在日韓国朝鮮人生徒が課外時間に集まり、差別について考え、お互いを仲間として支え合う場として、高槻第6中学校が自主的に、学校子ども会を設置した。その後、6中卒業生である在日韓国朝鮮人青年によって高槻むくげの会が発足した。当初子ども会活動を組織して、民族差別に負けない子を育てる活動を開始した。その他、日本語識字教室、高校生部会、青年部、婦人部をはじめ、民族差別を無くす取り組みを行ってきた。1985年、高槻市教委は、地域子ども会、識字教室等を市直営事業として実施し、以後むくげの会と市教委との協働において、在日朝鮮人事業が進められた。その後、諸外国からの渡日児童などの増加に対応して、在日韓国朝鮮人以外のものを対象とした教育事業に拡大している。
2.事件の概要
1990年から現在まで、むくげの会は高槻第1中学校内の社会教育部分室を使用していたが、2005年、高槻市から明渡請求がなされた。高槻市の主張としては、むくげの会に対しては、上記事業の履行補助者として分室を使用させていたにすぎず、むくげの会それ自体に対して行政財産の使用許可を与えたわけではないとしている。
また、上記事業は、外国人に占める韓国朝鮮人比率の減少に対応して、発展的に解消し、多文化共生・国際理解教育事業になったことを踏まえて、行政財産の適正管理に関する要望もあるため、明渡請求をおこなったとしている。
他方むくげの会は、当該分室について、「専用貸し」する旨の合意書が交わされており、これによって使用貸借契約が成立しているが、かかる契約の使用目的は終了していないため、当該使用貸借契約は終了していないとしている。また、このたびの明渡請求は、むくげの会が中心となって、下記教育権訴訟を提起したことに対する報復であり、権利濫用にあたる、とした。
3.高槻教育権訴訟
高槻市内のマイノリティーの子ども達50人が、外国人教育事業担当者(Aさん)、多文化共生・国際理解教育事業専門指導員(Bさん)とともに、高槻市などを被告として、マイノリティ教育を受ける権利が侵害されたとして訴訟を提起した。というのも、2003年、従前協働してきたむくげの会になんら相談することなく、学校子ども会等を全廃し、地域子ども会の活動日数を減らし、教育事業を縮小・廃止した。これによって、学校子ども会等への参加の機会が奪われ、民族的アイデンティティの育成ができなくなること、学習面のフォローができなくなることなど、日本人児童・生徒の多文化共生に対する意識が低下すること、これらによって精神的苦痛を受けることなどから、上記権利が侵害されたとしたのである。
また、Aさんについては、報奨費の支給に関わる方式が、市教委からの提案によるものであったにもかかわらず、これを不正な請求であるとして詐欺に関する虚偽の告訴を行い、かつ不当な強制配転がおこなわれたことについて、精神的苦痛を被ったとして、慰謝料を請求している。また、Bさんについては、事業の廃止・縮小に反対する意思を表明したことに対して、市教委は不快感をあらわにし、労働契約を更新しない旨を通知した。
これに対して、不当な雇止めに当たるとして、専門指導員たる地位の確認を求めている。
(文責:李嘉永)
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