1.提言委員会の構成
2006年に部落解放同盟幹部による不祥事の発覚を受けて、部落解放同盟中央本部は、部落問題の研究者や法律家、ジャーナリスト、元官僚など15人の有識者に依頼し、部落解放運動に対する提言委員会を設置しした。報告者はその提言委員会の委員、とりわけ提言を起草する小委員会委員として関わった。その経験を下に、部落解放運動に対する提言について紹介したい。特に法律家として重要と思う点について検討したい。
2.提言の開催経過
起草小委員会の4回を含め、計12回の会合を行い、毎回各委員の意見を報告した。それを小委員会でまとめるという手順を踏んでいる。ただ、一連の不祥事について、同盟はどのように捉えているかをまず考える必要がある。大阪府連は、飛鳥会事件を小西によるエセ同和行為として捉えており、支部段階でボス支配を行っていることが背景にあり、支部長交代や指導ができなかったことを問題点として上げている。
奈良の問題については、中川は県連になんら相談をせず市当局に圧力をかけていたところ、県連としては過ちを把握できず、支部長として容認しつづけていたとして、チェックできなかったことが問題点だとしている。京都府連の見解は、不祥事がすべて解放同盟員の行為であるかのように報道しているのは過ちだとしている。全解連推薦の職員も処分されている。ただし、同盟としては、職員として採用された後に支部を脱退したことを放置していた点は反省として捉えている。
3.提言の内容
「一連の不祥事の背景の分析と問題点」では、過去の教訓が生かされていなかったこと、行政との癒着、行政要求一辺倒の物取り主義が招いた行政依存、手段と目的の本末転倒、内部同盟員に甘い体質、闘わなくても要求が通ることによる資質・力量の低下、独善的な意識、不正をチェックできなかった組織上の欠陥などを指揮している。「部落解放運動再生への道」では、多くの課題を提起しているが、中でも重要と思われるのは、今後の運動を展開するに当たって、何を核にしていくのかという点である。
固有の差別問題、まさしく部落差別を入口として、部落の人達を組織する必要がある。それぞれの地区を基盤にしてどんな運動をするのかが重要である。差別の実態を点検し、何が差別として残っているのかという作業をして、差別の現実を認識する必要があるだろう。その上で、国際的な視点から差別問題の解決に取り組むことも必要である。
糾弾に関しては、相互理解と相互連帯を目指す糾弾であるべきだ。糾弾要綱をきちんと作成し、社会性、説得性、公開性を担保しながら差別を糾すことが必要であり、その取り組みを通じて部落大衆の自覚を高めるべきである。しかし現実には、糾弾要綱を作成していない場合もあるし、糾弾の状況と結果、成果をまとめていない場合もある。これらの課題を克服しない限り、糾弾への理解は難しいだろう。やはり、糾弾の手順についての指導をやるべきである。
さらに、規約に関わっては、組織の統制と統一性、さらに民主性を担保するような改正を行うべきであろう。統制に関しては、事後処理の規定しかなく、支部段階では会計監査の規定もない場合がある。それでは組織としての体をなさない。支部員が請求して開催できるようにしたり、都府県連が指導する規定も検討してよいのではないか。監査が行われない場合、中央本部や都府県連が行うようにしてはどうか。支部大会の開催についても、具体的に規約を改正するべきであろう。
同盟組織は、まさに支部の連合体である。しかしそれでは今般の事態は乗り切れない。組織として民主的な基盤を備え、自浄作用を発揮し、統一性を持たせるための規定を置く必要があるだろう。
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